WHOが「中国寄り」と言われたワケ…世界を翻弄した「迷走」の数々

現役外務官僚が語った
時任 兼作 プロフィール

厳しい検証は免れない

今回の新型コロナウイルスに関するWHOの対応は奇妙というほかありません。その原因が、政治的な要因であるとすれば、これは由々しきことです。とりわけ、緊急事態やパンデミック宣言の遅れは、感染拡大に致命的な影響を及ぼした可能性があります。これについては、厳正に検証をしていただきたいところです。

抗体検査やマスクについては、あとから科学的知見に基づいて見解を修正したということかもしれませんが、それにしては軌道修正のやり方が稚拙で、反省もみられません。マスクに対する見解のブレは世界中の人を翻弄しましたし、抗体検査の評価がなかなか定まらないことも、今後の政策に影響します。これらについても、詳細に検証されるべきでしょう。

 

WHOは言うまでもなく、公正な立場から、世界の保健衛生における指導的役割を果たすべき機関です。もし政治的思惑に翻弄されている、あるいは専門知識に不十分なところがあるなら、その時は組織の在り方を抜本的に見直すべきでしょう。

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米国のドナルド・トランプ大統領はテドロス事務局長に宛てた書簡で再三激しい批判を送っている。5月29日には「(WHOは)中国が完全に支配している。我々は抜本的な改革がなされねばならないと伝えたが、彼らは実行を拒否した」など非難し、期限を待たずに脱退するとまで宣言した。

トランプ大統領の言動にも政治的思惑はあろうが、一方で世界からWHOに向けられている不信感を率直に代弁した側面もあると言えるだろう。WHOの再生には、疑念の払拭と組織改革が不可欠である。