噂は本当なんだろうか…?

翌朝、まだクリスが寝てるうちに出かけてしまおうとしたが、クリスはホステルのリビングのソファに寝ていて、私が外出しようとするのを見てダッシュでついてきた。頭は寝ぐせでボサボサだが、相変わらず子犬のように潤んだ瞳をしている。

「ごめん、今日は一人で出かけたい気分なの」と私がそう言うと、クリスは3mほど距離を置き、静かについてきた。いや、こっちのほうがストーカーみたいで気味が悪いよ。

世界遺産の「モンサンミッシェル」。写真提供/歩りえこ

金銭的に余裕があってその男性のことが好きとか、面倒見てあげたいとかそういう女性ならいいかもしれないが、あのユースホステルに宿泊する女性にそんな子はいないと思う。そもそも私はお金がないからユースホステルに泊まってるわけだし、多くの人が数日でいなくなるし。

「勘違いだったらごめんね。最初に言っておくと私、お金ないよ。しかも君のこと、全然タイプじゃない。わたしマッチョで年上の男性が好きなの」『君にお金がないとか、僕がタイプじゃないとか全然関係ない。絶対に1円もお金を出させないって約束する!ただ本当に寂しくて数日だけでも近くにいるだけでいいんだ。邪魔はしないから、お願い!』

パリ滞在はあと5日くらいだし、ついて来ないでって言ってもついて来るんだろうな。実際のところ、クリスはランチをしてもぴったり割り勘で支払い、私に1円もせびってくるようなことはなかった

土地勘のあるクリスが側にいると頼もしかったし、これまでのパリ滞在では一人歩きだとスリに狙われることが多かったが、なんだかんだ一緒にいることで安心感があった。クリスは口説いてくることもなく、手を繋いでくることもない。ただただ、どこへ行くにもくっついて来た

「モンサンミッシェル」の城内。写真提供/歩りえこ