貧乏旅をしながら世界一周した様子を綴ったエッセイ『ブラを捨て旅に出よう』の著者・歩りえこさんによるFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)では、各国で出会った男性とのエピソードをお伝えしています。

今回は、これまでに10回以上訪れているフランスで出会った、ちょっと不思議な正体不明の男性について。彼と接して「世の中には色んな人間がいるな」と改めて感じたという歩さん。一体どんな人で、どんな出来事が起こったのでしょうか?

歩さんの今までの連載はこちら▶︎

なぜか心がぎゅっとなった
子犬のような彼との出会い

フランスは世界94カ国を周った中でも特に好きな国で10回以上は訪問している。大学時代はフランス近代史を専攻していたほどでヨーロッパを周遊中はパリを起点にしていた。

パリでの宿泊は主にユースホステルで、色んなホステルに泊まっていたが、中でも長居していたのがユースホステル協会に加盟しているホステルだ。個人経営のホステルだと男女混合ドミトリーなどでいかがわしいことや盗難などが起きることが多かったが、ユースホステル協会の加盟ホステルだとトラブルも少ない気がしてなんとなく安心感がある。

エッフェル塔をバックに記念撮影。写真提供/歩りえこ

ホステルにチェックインの手続きをしていると、小柄なクリンクリンの髪の毛をした男の子がちょこんとソファに座りこちらを見ていた。部屋に荷物を置きに行こうとすると、その子はついて来て、リビングに行けばまたついて来る。「どうしてついて来るの?

その子はまるで子犬のように濡れた瞳をウルウルさせながら『ダメ?』と私を見て言う。「別にダメってわけじゃないけど……。君は何歳なの?ここに何でいるの?」『僕はクリス(仮名)。24歳だよ。家族も友達もいなくて寂しいからここに住んでるんだ』どう見ても17歳くらいにしか見えないけど、24歳ってまぁまぁ大人じゃん。家族も友達もいないって……何て返していいのか分からないよ。

身支度を済ませて観光へ行こうとすると、クリスはまたついて来る。「いつまでついて来るの?」「君もすぐにパリから出て行っちゃうでしょ?すぐ行っちゃうなら、その間だけでも友達でいてほしい!」またウルウルした瞳で私のことを見つめてくる。こんな瞳で見つめられたら突き放すのが可哀そうで、これ以上ついて来るなと言いづらい。

ついて来るだけなら害ないし、今日だけならまぁいっか。「じゃあ、今日だけね」『ありがとう!じゃあ今日から君は僕の友達だね!嬉しいな』フランス語訛りの英語でクリスは言い、クシャッとした笑顔を見せた。

母性本能がくすぐられるってこういう感覚なのだろうか。異性としてときめくのとはまた別の感情で心がぎゅっとなった

ユースホステルのベッド。写真提供/歩りえこ