疑惑の「河井夫妻問題」、新聞・テレビが見逃している「重大な論点」

法相任命は「指揮権」狙いだったのか
與那覇 潤 プロフィール

思い出される法制史の汚点=「指揮権発動」

一般に法相は実権に乏しい「伴食大臣」(=名誉職のような、いるだけの大臣)とされ、今回の疑惑でも「建前は別として、閣僚の中では軽いポストで、実際は『重責』なんかは負っていない」とまで書くジャーナリストもいます。しかしこれは、軽率な見方です。

検察庁法第14条という、行政と司法の関係を扱う人には大変有名な条文があります。そこには、こう書かれています。

「法務大臣は、第4条及び第6条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」

簡略に述べれば、この条文が規定しているのは検察官は法務大臣の部下にあたる行政官だ、ということです。むろん、だからといって時の内閣が(たとえば関連法規や人事慣行を無視して)恣意的に検察庁内のポストを任免してよいかというと、それは別問題ですが、法相が「検事総長のさらなる上司」であるという事実は動きません。

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現行の検察庁法が公布されたのは、戦後の初期にあたる1947年。以来、条文に書かれている「指揮」とは、「この問題は国民の関心事であるから、検察はきちんと捜査し、結果を公表するように」といった形で行使されるものと解釈されていました。しかし「その逆」もあり得ることを示して、世相を騒然とさせたのが1954年の造船疑獄です。