日本を代表する憧れリゾートの一つである星野リゾートは、なぜこれほどまでに多くの人を惹きつけるのでしょうか? ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんならではの視点でその魅力に迫ります。今回は、神話の故郷にある「星野リゾート 界 出雲」をご紹介します。

「縁結びのまち」出雲の魅力は多彩
神話、手仕事、そして海の幸

朝食に出された大粒で薫り高いシジミの味噌汁は、美味しさはもちろん、オルニチンなどのアミノ酸やコハク酸がぎっしり。宍道湖は今もシジミの漁獲量が全国一。

島根県中東部に位置する出雲市には、“縁結びの神”として知られる出雲大社が鎮座しています。でも、出雲地方にあるのはそれだけではありません。シジミで有名となった宍道湖や、国宝・松江城を有し“水の都”と呼ばれる松江エリアでは、観るもの、聞くもの、触れるもの、そして食べるものも、すべてが“メイド・イン・出雲”と言っても過言ではないのです。

山陰沖で獲れる成長した雄のズワイガニを「松葉がに」と呼ぶ。旨味が凝縮された甘くて上品な最高級品。島根の冬は蟹が主役。「界 出雲」では、秋は「紅ずわい蟹」、冬は「松葉がに」の会席料理が振る舞われる。

農業が盛んな出雲平野では、日本海や宍道湖に面していることで漁業も盛んに行われ、食材に恵まれた町として豊かな食文化が栄え、今に継承されてきました。冬から早春までの期間限定で、愛好家が目の色を変える“カニの季節”には、日本全国からタグ付きの貴重な高級蟹「松葉がに」を食べに多くのグルメが訪れます。

静かで落ち着いた町として、一見地味な印象があるのですが、何度か訪ねるうちに新たな魅力を再発見、次には再々発見というように、徐々に出雲に魅了されてしまいました。すべての神様が日本中から集まるという出雲の魅力を、「界 出雲」を通して紐解いていきましょう。

エントランスを入ると、吹き抜けのロビーの天井近くに影絵が映る。「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」の物語がモチーフで、到着早々、神話の国らしさに旅情をそそられる。

『古事記』の物語の舞台として登場する出雲は、幾つもの神話や伝説があり、“全国の神様たちが集う神秘の古社を持つ神話の国”として伝承されています。

旧暦10月11日から17日までの間、全国の神様は出雲へ集まり、神と人が司る伝統行事「神在祭(かみありさい)」が行われます。そのため、神が集まる出雲地方では10月のことを「神在月」と呼び、他の地方では「神無月」と呼んでいます。そして全国の神様は、10月17日になると出雲大社をお発ちになりそれぞれの地に帰ると言われています。

この重要な「神在祭」の1週間に農業や男女の縁結びについて会議をすることを「神議り(かむはかり)」といい、出雲大社の御祭神で、縁結びの神である大国主大神さまと八百万の神々にご神縁を結んで欲しいと願う多くの人々が、今もなお全国から参拝に訪れているのです。

他にも、『古事記』に登場する「因幡の白兎」など、出雲には多くの神話が今なお語り継がれており、本当に神様が宿る土地のような気がしてきます。

「界 出雲」の看板は、出雲大社本殿の造りである大社造り(たいしゃづくり、おおやしろづくり)とはいかないが、出雲地方を感じさせる和の伝統的な造り。界の丸いロゴは全国に点在する「界」のシンボルマーク。

その出雲に根を張る「界 出雲」では、日本旅館「界」の主軸となるコンセプト、「王道なのに、あたらしい。」の通り、土地の伝統や文化、工芸、食など、地域をテーマにした“そこにしかない体験”を提供していると言います。果たして、何が王道で、何が新しいのか、ワクワクしながら宿に向かいました。

山陰を代表する人気温泉地・玉造温泉の中心地にある「界 出雲」は、玉湯川沿いに、緑のこんもりとした山を借景に佇んでいます。道路から少し奥まって建つ瀟洒な数寄屋造りの日本家屋が「界 出雲」です。

玉造温泉同様、島根県全体の温泉の美容力は、約1300年前の『出雲国風土記』にも評判だったとの記述があると言われる。「界 出雲」が化粧水のように滑らかな美肌の湯と掲げるのも納得。写真は客室に設置された信楽焼の露天風呂。
スタッフが考案し、スタッフにより演じられる「温泉いろは」が好評。紙芝居形式で説かれる玉造温泉開湯の物語は興味深い。毎日16時から大浴場前のスペースで開催。

玉造温泉は由緒ある日本最古の湯の一つとして、すでに約1300年前、西暦733年編纂の『出雲国風土記』にも記されていた“美人の湯”を有しています。そのお湯について、宿は「天然の化粧水のようになめらかな神の湯」と説いています。

そんな神の湯を宿す「界 出雲」の館内に一歩入ると、ショップの棚には出雲の名産品や、芸術的な伝統工芸品などが並べられ目を惹きます。また、客室へと向かう通路にも、さらに途中のライブラリー空間にも地元や県内の工芸品が飾られており、到着時から伝統文化の豊かさに触れることができました。