14年ぶり!アップルがCPU変更でデバイス大統合を狙う3つの理由

ライトユーザーには朗報、ではプロは?
西田 宗千佳 プロフィール

3つの内訳は、「ユーザーを向いたもの」が2つ、そして「メーカーとしての事情」が1つだ。順に見ていこう。

1つめは「性能を強化するため」。といっても、x86系のCPUが速度面で苦戦していたわけではない。インテルのCPUは、PC向けとしてはいまだ十分に強力だ。

だが、消費電力を下げつつ性能を維持する、という面では、ARM系のほうに優位な部分がある。

アップルのハードウエアテクノロジー担当シニアバイスプレジデントのジョニー・スルージ氏は、基調講演の中でAppleシリコンが狙う領域を次のように説明した。

【写真】アップルのハードウエアテクノロジー担当ジョニー・スルージ氏
  アップルのハードウエアテクノロジー担当シニアバイスプレジデント、ジョニー・スルージ氏

「一般的に、ノートPCは性能は低いが消費電力は低く、デスクトップPCは性能は高いものの消費電力は高い、といわれてきました。では、Appleシリコンはどこを目指すのか? ──『消費電力は低く、性能は高い』領域です」

【写真】「消費電力が低く、性能が高い」CPUを目指す
  Appleシリコンは「消費電力が低く、性能が高い」CPUを目指す。縦軸に性能を、横軸に消費電力をとったグラフで、その優位性を強調した

たとえば、シンプルにCPUのベンチマークをとると、iPad Pro(税別8万4800円から)とMacBook Air(税別10万4800円から)では、CPU性能はiPad Proのほうが倍近く速い。

機器として特質が異なるため、CPUベンチマークだけを併記して比べるのはアンフェアだが、それでもiPad Proに使われるA12Z Bionicが、同じように消費電力とコストを重視したMacBook Air向けのインテル製CPUを上回る場合があるのは間違いない。

【写真】iPad Proでのテスト結果
【写真】MacBook AirのGeekbench 5でのテスト結果
  上がiPad Pro、下がMacBook AirのGeekbench 5でのテスト結果。価格は近いが、CPUの速度的にはiPad Proのほうがずっと速い

不安材料は「プロ向け」のスペック

集積するコア数を増やしつつ、消費電力を下げて性能を維持する場合、今のARM系 CPUはとても向いている。だから、同じようなコストで「Appleシリコン採用のノート型Mac」が登場した場合には、処理速度の面でもバッテリー動作時間の点でも、現行機種より有利になると予想できる。

一方で、本当に高い処理性能を要求される「プロフェッショナル用途」の場合、Appleシリコンとインテル製プロセッサーの能力差がどうなるかは、不透明な部分がある。

一般的なインテル製CPUに現在、内蔵されているクラスのGPUであれば、Appleシリコン内蔵のものが凌駕する可能性は高い。だが、プロ向け製品では高速な「ディスクリートGPU」を使う場合も多く、これとAppleシリコン内蔵GPUの性能差も不明だ。

おそらくアップルには、「Pro」と名のつくデスクトップ型Macの性能要求を満たせるほどのプロセッサーをも開発する予定があるのだろう。

これは筆者の予想だが、アップルはまず、ハードルの低い「一般向け」製品での移行を進め、「プロ向け」はその後、じっくり時間をかけて取り組んでいくのではないだろうか。

macOSとiOS/iPadOSの関係は?

もう1つ、ユーザーメリットの大きな理由として、「iPhoneやiPadのアプリがそのまま使えるようになる」ことが挙げられる。

そのことに、どんな利点があるのだろうか?