新型コロナによる三密回避やリモート(遠隔)の推奨は、戦没者追悼や平和継承のあり方も変えようとしている。毎年8月15日、政府が日本武道館で開催してきた全国戦没者追悼式は今年、5分の1の規模に縮小することが決まった。戦後75年の今年、風化を加速してしまうのか。
すでに風化の兆しは現れている。コロナの緊急事態宣言が解除された翌々日の5月27日。静寂に包まれた東京・九段下にある千鳥ケ淵戦没者墓苑で、加藤勝信・厚生労働相ら数人だけの慰霊行事が行われた。
37万人分の日本人戦没者の遺骨が納められている墓苑では毎年5月、「拝礼式」と呼ばれる追悼式が開かれる。皇族の出席が恒例で、昨年は秋篠宮家の眞子様を初め660人が参列した。
だが今年はコロナ感染予防のため、屋外であっても、式は中止に。加藤厚労相らが献花に訪れただけで、開催案内もできなかったため遺族の姿はなかった。津島雄二・同墓苑奉仕会会長は取材に対し「残念以外の何物でもない」と険しい表情だった。
追悼行事は縮小が相次いでいる。沖縄戦で組織的な戦いが終わったとされる「慰霊の日」の6月23日にあった追悼式も参列者わずか160人。8月6、9日に広島と長崎である追悼式も大幅縮小が決まっている。