「経済的自立」の意味

体力の限界を感じていた聡子さんは、59歳でフルタイムの看護師を引退した。40年間、年金保険料を支払ったが、年金額はわずか月額10万円。65歳の今は月に数日だけパートの看護師として老健施設で働いている。その収入が月に7〜10万円になるので、合計20万円弱は使える計算だ。もっとも数千万円の投資信託があるのだから、無理に働く必要もない。悠々自適の生活だ。

また無駄遣いをする生活にも、まったく縁がない。
「10年間、あれだけの思いをして資産を築いたんです。大事なお金ですから、軽い気持ちでパッと買い物しようという気持ちにならないです。でも必要なものはしっかり買う。自然とそういうスタイルになります」

万事この調子なので、現役を引退しても財産が減る様子はない。将来のことは誰にもわからないけれど、遺産も相当額になるのではないだろうか。

「もうエンディングノートを書いたんです。子どもにはお金は残しません。ろくなものにならないでしょ。娘も息子もそれぞれ配偶者がいるし、孫もいます。将来、孫が進学する時にお金を包んだりはするけど、それくらいですよ。残りは大学に寄付しようと思っています。よく調べて自分なりに決めた所があるので」

お墓も用意してあるので、自分が死んだら直葬してもらうのだと聡子さん。なにもかも決めて、実にさっぱりしている。普段の生活は「心の安定剤」だという犬3匹の世話で忙しい。保護犬を引き取って育てているのだ。飼い主が高齢になって飼えなくなった犬、捨てられて餓死寸前だった犬。どの子も聡子さんの元で幸せに暮らしている。

これから老後を考える世代の女性たちに、聡子さんはこんなアドバイスをしてくれた。
「女の人はぜひ、経済的自立をすること。それさえできれば結婚して男性を頼って生きていくという価値観はなくなるから、我慢しなくていい。いつリタイアするかという計画も立てられます。30代、40代の人は今後、投資しなければ生きていけないと思いますよ。今、一生懸命に働いて生活するのも大事だけど、目先だけを追わないで、1万円でもいいからちゃんとした投信を買っておいた方がいい。そして、たくさん本を読んでください。きっと開眼すると思います」

自立すれば対等でいられる。遠慮も我慢も必要ない。また、聡子さんは看護師として、かねてから「自立」はしていたが、貧困に振り回されていた。貧困にあると「自分だけ」では立てないのだ。このスタンスは女性に人生の自由を与えてくれる。そのために長期投資を利用するという方法があることを、聡子さんは決死の10年間の経験を通じて教えてくれたのだ。

お金に追い掛け回されて働きづめだった。そこから脱出するためにしたのは、勉強した上での投資。自分の好きなように生きるための努力だった(写真の人物は本文と関係ありません) Photo by iStock