息子は復学、しかし夫が失業

母親がひたすら頭を下げ続ける姿を見てから息子は様子が変わり、高校にも復学してくれた。しかし、夫の方は相変わらず頼りない。ちょっとお金が貯まるとパチンコとゴルフ。ゴルフウエアにも凝って、聡子さんの3倍は洋服を持っている。それでも稼いでくれればよいのだが、マンションを購入して10年後、夫の勤務先が倒産。失業してしまった。

「うちに帰ってきて『会社が倒産しちゃったんだけどさ』と。『どうするの? うちを買うとき、死ぬほど働いて払うと言ったじゃないの』と言ったら『俺は一生懸命働いたよ。ははは』と笑っている。そんな人なんですよ。なんでも調子よく逃げてしまう」

そのうちに夫は再就職したが、給料はどんどん減るし、聡子さん自身の給料も増えない。
「これだけ夜勤をしているのに、手取りが20万円。信じられないでしょ。総所得は30数万円あるのに、介護保険や税金など、天引きされる金額が上がっていたんですよ」

住宅ローンを安い金利で借り換える努力はしたが、子どもの学費が増える時期になり、家計はなかなか改善しない。若い頃から給料天引きでコツコツ貯めた貯金が600万円あって、夫に内緒の大切なへそくりだが、それを取り崩したとしても状況は厳しい。
「いろんなシナリオを考えたけれど、どうしても借金が払えないんです。計算したら3年後には、自己破産になってしまう。そうすると、子どもが帰る家がなくなってしまう。それだけは絶対に嫌だったんです」

しかも当時、聡子さんは49歳。老後の年金が不十分なのも知っていたし、あとのない年齢である。この時、聡子さんは強く思った。どうしていいかわからないけれど、なんとしても家庭を守る。まさに不退転の決意だった。

このままでは無理だ…そんな現実をきちんと見たからこそ、聡子さんは一歩を踏み出すことができた Photo by iStock