「セックス依存症」という病気は存在しない

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原田 隆之 プロフィール

「セックス依存症」

冒頭で述べたとおり、現時点で「セックス依存症」という病名は公式には存在しない。何が公式な病名かという点において、一番多くの専門家が拠り所としているのは、世界保健機関(WHO)による「国際疾病分類(ICD)」である。これは昨年のWHO総会で第11版が承認され、今後1〜2年のうちに国内適用されることになっている。

また、精神疾患については、アメリカ精神医学会(APA)による「精神障害の診断および統計マニュアル(DSM)」がある。これはアメリカの学会がまとめたものであるが、世界中で使用されている。こちらは、第5版(DSM-5)が最新版である。

現時点で、ICD-11にもDSM-5にも「セックス依存症」という病名は収載されていない。このため、医師は「セックス依存症」という診断をしないし、研究者もそのような病名に基づいて研究をすることはない。

このように病名を統一することの理由は、専門家がバラバラの病名を各自の基準で用いていては、正確な診断や研究はもとより、専門家同士コミュニケーションもできないからである。

したがって、メディアや一般の人々も、できるだけこれらの基準を逸脱しないで病気を語ることが望ましい。勝手な病名をつけると、それが差別やスティグマにつながる恐れが大きくなる。また、「セックス依存症」のようなセンセーショナルな病名はなおさら軽々しく用いるべきではない。

 

とはいえ、たしかに性的な問題行動を反復し、それがやめたくてもやめられないという状態は存在する。それはあたかも依存症のようであり、そうした病気で悩んでいる人がいるのは事実である。

有名なところでは、かつてタイガー・ウッズが「セックス依存症」の治療を受けたなどという報道があったが、これは彼の「問題」をメディアがそう呼んでいただけの話である。

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