トランプにより可視化された白人至上主義者

結局、製作資金を集められなかった監督は、本作と同名の『SKIN』という短編を制作して投資家たちにアピールし、この短編は見事2019年度アカデミー賞の短編映画賞を受賞。長編とは異なり、白人至上主義者の元で育つ子供の視点で描いたこの作品は、21分という短さながらも、白人至上主義者の日常や黒人が直面する恐怖を強烈に映し出し、あっと驚くラストで締め括られる傑作に仕上がっている。

そして、間もなく日本で公開される長編がアメリカで公開された2019年。この頃にはトランプ大統領が就任し、ナティーヴ監督が予言したように、アメリカの人種的分断は誰の目にも明らかになっていた。

『SKIN/スキン』より

「この映画を編集している間に、トランプ政権下になり、シャーロッツビル事件が起こり、白人至上主義者の存在が可視化されました。アメリカが人種差別によって分断されていることが、とうとう誰の目にも明らかになったんです」

アメリカに衝撃を与えたシャーロッツビル事件とは、2017年8月に起こった白人至上主義者の集会だ。バージニア州のシャーロッツビルに設置されていた、南北戦争の南軍の司令官リー将軍の銅像を同市が撤去すると決定したことに抗議する白人至上主義者グループと、反ヘイト団体が衝突し死者数人が出た事件である。このとき、トランプ大統領は人種差別を非難しながらも、「どちらの側にも善い人々がいる」と白人至上主義者を表立って批判しなかったのだ。

トランプの親戚はユダヤ人という皮肉

ナティーヴ監督曰く、白人至上主義者グループは歴史的に黒人だけでなく、ユダヤ人やアジア人もターゲットにしてきた。そして9.11以後、彼らがことさらに攻撃するのはイスラム教徒だという。

しかし、トランプ大統領の支持者である白人至上主義者たちは、トランプ大統領の娘・イヴァンカの夫で大統領上級顧問を務めるジャレッド・クシュナーがユダヤ系であることを知らないはずはない。ナティーヴ監督はこの矛盾を次のように説明する。

「白人至上主義者の多くはその件について知ろうともしていないし、知っている人もあえて目をそむけていると思う。彼らにとってトランプ大統領はホワイトパワーを支持するリーダー。それだけで彼らは大統領に投票するんですよ。トランプ大統領にしても、票のためなら何でもする。例えば、毎週日曜日に聖書をもって教会に行くフリをしたりね」

つまり、トランプ大統領の人種差別的な言動も票を取り込むための単なるパフォーマンスなのだ。