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中国政府が進める香港への「恐怖支配」…狡猾なやり口が見えてきた

明らかになった「国家安全保護法」の中身
ふるまい よしこ プロフィール

このわずか半日ほどの間における解釈の激変が物語るのは、両弁公室による立法会への介入、そして両弁公室の立場についての新解釈について、香港特別行政区政府は事前に一切知らされておらず、その脈絡を理解できていなかったということだった。

つまり、中国中央政府は直轄機関から「香港スクール」を外しただけではなく、実は香港特別行政区政府ですら外していたことになる。

そこから考えると、5月21日夜に明らかになった香港国安法の制定にまつわる審議についても、香港政府はそれまで具体的に知らされていなかった可能性もある。一方で、もし香港政府が中央政府の制定の動きを知った上で協力していたとなると、香港政府自ら立法会を軽視したそしりを免れない。しかし、香港政府は中央政府に従順になる以外、選択肢はなかったはずだとすると、香港の「自治」は完全に骨抜きにされたにほかならない。香港政府は自ら「外し」に便乗したことになる。

中国政府がこうした直接的な介入を始めたのは、明らかに昨年6月の市民デモの発生以降、香港政府、そして立法会の多数派でありながら事態を改善できずにいた親中派にもまた、愛想を尽かした証拠といえる。そして、中国政府はこれまで香港事務を任せてきたすべての関係者を政策決定から外し、一存で事態を左右できる環境を構築しようとしているのである。

 

香港の人々が受けたショック

香港国安法の制定は必ずしも根拠のないものではない。

香港の憲法と呼ばれる「香港基本法」23条には「香港特別行政区は自ら、いかなる国家の転覆、分裂、反乱の扇動、中央人民政府の転覆、及び国家機密取得の行為を禁止し、外国の政治組織あるいは団体が香港特別区行政区において政治活動を行うことを禁じ、香港特別行政区の政治組織あるいは団体が外国の政治組織あるいは団体と関係を結ぶのを禁じる法律を制定すること」と記されている。現実に2002年にもこれに基づいて、香港と、また同様の条文を持つマカオでもそれぞれ「公安条例」が起草されている。

だが、香港市民が激しく反発。また、翌年中国からもたらされたSARSによって、経済的にも都市機能的にも大きなダメージを負った市民たちの間で中国政府(国家)に対する不信感が噴出。同年7月1日の主権返還記念日には、当時としては過去最大の50万人の市民が街を練り歩いた結果、同草案は撤回された(そして、この出来事はその後、初代行政長官の辞職につながった)。