2020.06.26
# 格差・貧困

「それ、気にしすぎだよ」男性が女性の訴えに口をはさむ前に考えたいこと

男性とフェミニズム
小手川 正二郎 プロフィール

話が遮られない「場」をつくる

では、自分が直接経験しえない他人の経験に、どうやったら近づいていくことができるのだろうか。

冒頭のオンライン授業の話に戻ると、コロナウィルスの感染拡大が収まり対面授業が実現したら、グループディスカッションをしたいと言う学生もいた。相手の顔を見て直接議論し合えたら、より多様な実例に触れられるし、そこから議論も掘り下げられるのではないか、と。そう考えることは、間違ってはいない。

しかし、議論の場は必ずしも安全ではないし、公平でもない。議論の場での男性たちの嘲笑や逆ギレによって深く傷ついた経験をもつ人は、そうした場で発言するのをためらうだろうし、性的マイノリティの人々は自分の本音を話すことがカミングアウトを強制されることにもつながりかねない。何より、男性たちが女性たちの発言を遮ったり、水を差したり、流したりしてきたのも、ある種の議論の場であったことを忘れてはならない。

〔PHOTO〕iStock
 

哲学者のアイリス・マリオン・ヤングは、議論の場が知的な「競争」の場になってしまいやすく、論争好きで議論することに慣れた一部の男性たちに有利に働く一方で、議論の仕方になじめず、男性たちから見たら議論を「混乱」させる仕方でしか話せない女性たちやマイノリティの人々に沈黙を強いる傾向があることを指摘している(Iris Marion Young, Intersecting Voices, Princeton University Press, 1997)。

そうした場では、自分が支持する結論に有利な情報にのみ関心が向けられたり、相手の意見を特定の主義主張にラベリングする断定が好まれたりするため、相手の声に真摯に耳を傾け、自分の見方や価値観自体を問い直すことにつながりにくいのだ。

男性たちが女性や性的マイノリティの人々のことを真剣に知ろうとするなら、一方的に意見を求めるのではなく、まずは彼女たちが安心して、話を遮られることなく語れる場をつくることから始めなくてはならない

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