食べることは生きること

20年以上続き、手塚治虫短編賞も受賞した名作、伊藤理佐さんの『おいピータン!!』。現在は主人公のとある事情により『おいおいピータン!!』とタイトルが変わって連載が続いている。

」をテーマとしてはいるが、「食べるって生きることなんだなあ」と感じさせられる人生マンガと言える。「食べる」ことが生活と密着しているからこそ、「そうそうそう!」「あるあるある!」満載なのだ。前回「人に見せられない冷蔵庫」について描かれた7巻第2話をご紹介したが、あの主人公のように自分の冷蔵庫の中から「二回死んだアジの干物」を目撃したことのある人は少なくないはずである。

ということで、ランダムに『おいピータン!!』で描かれている「人間学」を検証していく連載第2回。今回のテーマは「喧嘩」だ。

(文/FRaU編集部)

とある姉弟の大喧嘩

少し前のことになるが、筆者の小学生の子どもたち(姉と弟・3歳違い)が大喧嘩をしていた。3歳下の弟が泣きわめいている。強い姉に対し、弟は顔を真っ赤にし、「許せねえ!」「お前と家族でいるのもう嫌だ!」「ふざけんな!」……しばらく様子を見ていたが、暴れながら「死ね!」という言葉が入ってきたので、「なんで死ねって思うくらい怒ってるの?」と聞いてみた。

すると泣き崩れながら弟は叫んだのだ。

「こいつがっ! 白身魚のフライっ! 真ん中を食べた~~あああああ!!!」

もちろんそれはゆゆしきことだ。最後に食べようととっておいたショートケーキのイチゴを「いらないの?」とパクっと食べられて殺意を抱くという有名なあれである。どうやらジャンケンする前に一番食べたかったフライの「最適部分」をぱっと食べられたことで、激怒したらしい。その気持ちもよくわかる。

でも、それって泣き叫ぶことか?「許せねえ」ことか? 

そうか、それは嫌だね、ひどいねと言いながら、「いま言ってたこと、マネしていい?」と言ってそのままの言葉と言い方をマネをしてみたら、怒り狂っていた弟もぷはっと笑い、「バッカみてえ」。「これからはジャンケンしてから食べましょう」ということで落ち着いた。それからも時々、「許せねえ!」をやってはいるが、「死ね!」はないので、よしとしよう。

気持ちはわかるけど…Photo by iStock

喧嘩の発端、遡ってみませんか

これは犬もくわないどころのくだらない喧嘩だけれど、「傷つけ合い」「暴言吐きあい」「もう許せねえ!!!!」と思うようなことのきっかけを遡ってみると、意外と小さいことが原因だったりする。

そういえば筆者も小学生のころ姉と「もう姉妹関係を解消する!」というほどの喧嘩をしたことがある。その理由は、小さいカーネーションを「ミニカーネーションと呼ぶか、ベニカーネーションと呼ぶか」だった……。『おいピータン!!』担当のK編集長は伊藤理佐さんと高橋留美子さんの作品で何がベスト1かというお題をきっかけに、大喧嘩したこともあるらしい。

もちろん、議題についてディベートするような「反論」は大切だけれど、感情的になって罵詈雑言言っちゃう「別のスイッチ」が入るとややこしいことになるのではないだろうか。

さて、今回伊藤理佐さん『おいピータン!!』2巻からご紹介する第3話は、カップルの喧嘩を題材にした一編。3年同棲していたのに、「もう終わり」「もう別れるしかない」と思っているらしい。さて、その発端は? そして「もう終わり」になってしまうのだろうか――。

殴り合いの喧嘩にしても、LINEでどんどん言葉がとがっていきブロックするまでにいたるような喧嘩にしても、なにかしら喧嘩をしたことがある人が多いはずだ。伊藤さんの漫画を読むと、「ちょっと遡って考える」ことができるようになるのではないだろうか。