父の急逝後に突然認知症を発症した母の登志子、そしてしっかり者と思っていたのに、実は認知症になりつつあり、母の実家をゴミ屋敷にしていた伯母の恵子。伯母は独身で、編集者の上松容子さんは従妹と協力して2人のケアをすることになった。

当初同居を反対していた義母も最後とは折れて母とも同居になり、上松さん、義母と母、そして夫と娘との生活が始まる。使用済みトイレットペーパーを流さずにトイレの床に積み上げてしまったり、他人の歯ブラシを使ってしまったり、同居して見守る介護の大変さを思い知ることとなった。そして編集者だった母が大好きな本を読めなくなっている様子に胸が締め付けられる。

かたや、転んだ後に入院していた伯母の退院後の居場所も探さなければならない。社交的だった伯母は見舞うと元気そうで母よりも大丈夫だと思っていたのだが、夕暮れになるとより一層認知症の症状が進む現状も目の当たりにした。そんな伯母が快適に暮らせる施設はないものだろうか。「居場所探し」の困難な現状が待ち受けていた――名前だけ変えたドキュメント連載。

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老人ホーム探しを開始したものの……

伯母は老人健康施設での暮らしに慣れ、夕暮れ症候群はあるものの、それなりに穏やかに過ごしていた。都内にしては自然の豊かなこの場所を終の棲家にしてやりたかったが、リハビリを目的とする施設の性質上、長居することはできない。特別養護老人ホームの入所を申し込んではいたが、待機者が多く、すぐに入ることはできない。とすると有料老人ホームを探さねばならない。ただし、探すと言ってもまだ家が売れておらず、どの程度の予算が組めるのかも未定だった。世の中の老人ホームがどの程度の費用で利用できるのか、とにかく情報集めだけ進めることにした。家の売却については、不動産会社に勤める晴子叔母に一任した。

一般の不動産物件もそうだが、画面上の写真ではどの施設も美しく清潔に見える。もちろん足を運んで見学しなければいけない。私たちは、手頃な費用の施設を選んでは、見学を申し込んだ。

介護施設のみならず、不動産物件は当然ながらきれいな写真を使う。実際に足を運ばなければわからない Photo by iStock

そのうちのひとつは、伯母や母の実家から徒歩5分。マンションをまるごと買い取って設えられた老人ホームである。ここもまた、新築ではないが、普通のマンションという印象の落ち着いた施設だった。相談員はじめスタッフも丁寧な応対をしてくれる。ここなら地元にいる古くからの友人を招くこともできるし、伯母は安心して過ごせるのではないか。

さて、今入居可能な部屋はいくつあるのか尋ねてみると、ひと部屋、個室が空いているという。個室ならプライバシーが守られるし、気位の高い伯母も安心だろう。

しかし、案内された部屋を見て一気に気持ちが萎えた。この施設は緩やかな坂の途中にあるので、1階は途中から半地下になってしまう。空いていた部屋の窓は、道路より下にあり、したがって外の風景が半分しか見えない。部屋は小綺麗で快適なのに、閉じ込められたような感じがするのだ。伯母の悲しそうな顔が思い浮かんだ。窓からの風景以外はかなり良い条件だったが、当人の気持を推し量ると、これで我慢してねとは言えない。話を進めることは諦めた。