有罪か無罪か…人を「法のグレーゾーン」で裁く検事たちの意外な心理

クライムサスペンス『法の雨』

「無罪判決」を連発する裁判官

―新著の『法の雨』は、司法をテーマにした社会派サスペンスです。無罪判決を連発して「無罪病判事」と呼ばれる嘉瀬は、ある刑事裁判の結審直後に脳卒中で倒れてしまう。その裁判で無罪判決が下された被告人が殺され、担当検事だった大神は老人ホームに入った嘉瀬を訪ねます。

実はアイデアのきっかけは「週刊現代」の記事なんですよ(笑)。'18年に『黙過』を出した後、徳間書店の担当編集者に週刊現代の「大阪高裁で『逆転無罪』を連発する裁判官の真意」('17年6月24日号)という記事を見せられて。

さらに、成年後見制度にもいろいろ問題があると知って、「無罪を連発する裁判官が倒れて成年後見制度の世話になる」という本作の設定を思いつきました。

 

検事にとって無罪判決とは死刑宣告のようなものでしょう。無罪を連発する裁判官を描くに当たっては、その判決を下される検事の視点がふさわしいだろうと。

検事の大神は58歳。小説の主人公としては年配ですけど、定年間近の嘉瀬が倒れてからも関わっていく人物なので、若すぎず、対等に渡り合える年齢にしたわけです。

―推定無罪が原則なのに、日本の刑事裁判で無罪判決が出ることは極めて少ない。この「有罪率99・7%」という問題も物語の基盤になっています。

日本の場合、検察は確実に有罪をもぎ取れる事件だけを起訴するという現実がある。

だけど、刑事裁判というのはもともと「有罪か無罪か」から始めるものであって、無罪の可能性が高い人間を起訴しないとなると、検事が裁判官の役目も担っていることになってしまう。それはやはり問題があると思います。