「ポスト・ポン・ジュノ」が描く、韓国「超階級社会」の闇

一番弱い存在が、一番恐いかもしれない
此花 わか プロフィール

「この法案について議論することは、韓国映画界にとって非常に重要だと思います。韓国映画界の収益の大体が劇場からの収入によるものなので、ヒットするような作品が制作される傾向があります。

すると、工場で作られたような同じような映画ばかりになってしまい、多様性がなくなっていく恐れがあるんです」

イ・スジン監督の言葉を聞いて思い出すのは、以前別の韓国人監督にインタビューした際、「『パラサイト』の快挙で「売れる映画を作るために、ポン・ジュノやナ・ホンジンなど大物監督がますます偏重され、若い映画監督が育ちにくくなるかもしれない」と言っていたことだ。

少し意地悪かもしれないが、その点についてスジン監督に聞いてみると、「韓国映画界のよいところは能力主義です。短編映画で実力を見せれば、学歴、血縁、地縁、学閥に関係なく、長編デビューできるから」とのこと。

撮影現場でのイ・スジン監督(写真左奥)
 

この答えは少し意外だった。韓国は日本よりもずっと厳しい縦社会の学閥・人脈社会だといわれているからだ。本作『悪の偶像』でも、電気屋のジュンシクは被害者の父であるにもかかわらず、加害者の父である政治家のミョンフェにどこかへつらう態度を見せている。韓国社会は、映画界という活力のあるところから少しずつ変わりつつあるのかもしれない。

ポン・ジュノ監督がアカデミー賞を受賞した後のたった数週間以内にこういった署名が集まり、成功を問題提起するチャンスに転換する姿勢にも、韓国映画界のバイタリティを感じる。

最後にスジン監督はこう語った。

「『ひどい病気にかかっているのに、痛みや症状がない』というセリフがこの映画の根底に流れています。このセリフが出るシーンに注目してほしい。私たちは病いにかかってはいないか。私たちの社会は病にかかってはいないか。そう問いかけてみてください」

コロナ禍によりさまざまな社会問題が浮き彫りになり、私たちを脅かすものはウイルスだけではないことを知ったいま、改めて考えさせられる言葉だ。

【参考】
※1…「移民流入」日本4位に 15年39万人、5年で12万人増 – 西日本新聞
※2…「不法滞在」の日中韓トライアングル – 日本戦略研究フォーラム
※3…韓国の映画人、「ポスト・ポン・ジュノ法」制定求め署名 映画産業の構造改革求める - 映画の森

『悪の偶像』は6月26日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開
配給:アルバトロス・フィルム
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