「ポスト・ポン・ジュノ」が描く、韓国「超階級社会」の闇

一番弱い存在が、一番恐いかもしれない
此花 わか プロフィール

不法移民は韓国の社会問題の一つだ。2015年における韓国の移民数は約37万3000人。日本の約39万1000千人と比べるとさほど変わらないが、韓国の人口が日本の半分未満(日本の人口: 約1億2000万人、韓国の人口: 約5100万人)であることを考えると、人口比では日本の2倍以上の移民がいることになる(※1)

これは、アジアのなかでは一番寛容だと言われる韓国の難民法と、外国人労働者が合法的に雇用される「雇用許可制」などが理由であると推測される。

なかでも不法滞在者数は約20万人もおり、その数は日本の約7万人のおよそ3倍だ。国内屈指のリゾート地、済州島では1日に18人もの中国観光客が自国に戻らないという(※2)。性的に搾取される女性や賃金が支払われない不法移民も少なくない。

ただ監督曰く、近年、韓国政府は不法移民者が名乗り出て一旦本国へ戻れば、外国人労働者として再度入国できるなどの寛容な施策をとっており、「不法移民は必ずしも社会の底辺ではなく、なかには成功している人もいる」という不法移民の中でも、搾取される者とそうでない者の間で格差が生まれているようだ。

ポン・ジュノの成功が若い映画人の活躍を阻む!?

ポン・ジュノ監督〔PHOTO〕Getty Images

さて今回のインタビューで、私はイ・スジン監督について一つ聞きたいことがあった。いま韓国映画界を騒がせている、「ポスト・ポン・ジュノ法」についてだ。

 

ポスト・ポン・ジュノ法とは、映画界の格差をなくし、次世代のポン・ジュノを生み出すことを目的とした法案で、この法案を進める団体「映画産業の構造改善法制化準備の集い」は、1325人の映画人の署名を集めたと今年2月26日に発表した。

この法案には、「大企業の映画配給業と上映業の兼業制限」「特定の映画のスクリーン独占・寡占の禁止」「インディペンデント映画・アート映画の製作と、それらを専門に上映する映画館への支援の制度化」の3項目がある。要するに、大手配給会社が映画館を経営しており、自分たちの配給する映画を映画館で優先的に上映している。それによって、インディペンデント・アート映画が上映されなくなるという現状を改革しようというものだ。

同団体によると、韓国の映画館の売上高の上位10本の合計額が全体の46%を占め、米国(33%)、日本(36%)に比べて上映される作品に偏りが見られるという(※3)

この法案について、「ポスト・ポン・ジュノ」と称されるイ・スジン監督はどう考えているのだろうか。