宇都宮市の控訴は
保育の実施責任の放棄

6月12日、宇都宮市議会ではこの判決を不服として控訴することを議決した。地元の下野新聞では以下のように報じられている。

>>宇都宮市内の認可外保育施設「といず」(廃止)で2014年7月、宿泊保育中の同市、山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡した事件に関する訴訟を巡り、宇都宮市議会は12日、市の過失を認定し賠償を命じた宇都宮地裁判決を不服として、市の控訴を認める議案を29対15の賛成多数で可決した。市は近く控訴の手続きをする見通し。

市は議案の提案理由で「裁判所と市の認識に開きがあり、事実誤認や、判断根拠が明確でない部分がある」などと述べた。

会派ごとの賛否は次の通り。【賛成】自民党(20人)、公明党(6人)、青心会、こころの会、新風(各1人)【反対】市民連合(8人)、未来、共産党(各3人)、緑(1人)
下野新聞「SOON」ニュース 2020/6/13 10:09配信

そして、16日には宇都宮市は東京高裁への控訴を行った。

>>宇都宮市内の認可外保育施設「といず」(廃止)で2014年7月、宿泊保育中の同市、山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡した事件を巡る訴訟で、宇都宮市側は16日、市の過失を認定し賠償を命じた宇都宮地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。 
下野新聞「SOON」ニュース 2020/6/17 10:31 配信

繰り返しになるが、宇都宮市には市内に住む子どもの保育の実施責任、保育施設への監督権限を持っている。その宇都宮市が、施設内での虐待に関する極めて詳細な通報を複数回受けていたにもかかわらず、抜き打ちではなく事前に施設に通告してしまった上、わずか30分という短時間で実際に子どもの保育が行われていた場所を全部確認しないというずさんな立ち入り検査しか行わなかったのだ。

こういう現場を少しでも確認できていれば…

そのせいで、通報されたような事実を確認することができなかった。もし、抜き打ちの立ち入り検査を行い、保育施設として表示されているすべての場所をきちんと調べていれば、グルグル巻きにされた子どもたちを見つけることができ、それらが「適切な保育」だとは認定しなかっただろう。

通報の甲斐なく、虐待の現場は放置され、立ち入り検査の2ヵ月後に9ヵ月の女の子の命が失われてしまったのだ。その事実を忘れてはならない。

笑顔が可愛らしい愛美利ちゃんは残念ながらもう帰ってこない。心からご冥福をお祈りしたい。だからこそ、このような悲劇が二度と起こらないよう、監督責任についても明確にしておく必要がある 写真/遺族提供