事件の2ヵ月前に寄せられた告発

今回の判決で、認可外保育施設に対する宇都宮市の指導監督責任が明確にされたことは画期的である。しかしそれは当然のことと思える。事件を詳しく知れば知るほど、「トイズ」で行われていた数々の虐待が宇都宮市によってきちんと調査されていれば、愛美利ちゃんを救うことができたかもしれないと感じざるをえないからだ。
実は愛美利ちゃんの死亡事件からわずか2ヵ月前、「トイズ」施設内で預かっている子どもへの虐待が行われているという2件の詳細な通報が宇都宮市に寄せられていた

1件目の通報は2014年5月27日、「トイズ」の利用者である保護者からであった。預けていた男児を迎えに行ったところ、その男児の左手の人差し指の爪が全部剥がれていた、というのである。男児の兄も、同年1月20日に顔にあざを作って帰ってきたことがあったことから、市に通報を行ったものであった。

実際に爪がはがれた写真も存在する。左手人差し指の爪が丸ごとなくなった、痛々しすぎるものだ Photo by iStock

さらにその翌日の28日には2件目の通報が寄せられた。「『トイズ』で働いている従業員の知人」と名乗る匿名の人物からの電話による通報で、内容は非常に具体的なものであった。たとえば、


(1)「トイズ」では30〜40人いる子どもをわずか1〜2名の保育者でみていること、

(2)市に報告している職員は実際には働いておらず、名前だけ借りていること、

(3)人が足りないので、預かった子どもを毛布でグルグル巻きにしてひもで縛っており、今は暑いので大人用のワイシャツを着せて袖を縛って動かないようにしていること、

(4)給食費を取っているが、子どもたちには食事も飲み物もろくに与えず、おむつも取り替えていないこと、

(5)病児室があるとうたっているが、健康な子どもと一緒にしていること、

などである。

そして、それらの事実を確認してほしいが、事前通告すれば被告らは事実を隠すだろうから、施設に事前の予告無しに立ち入り調査をして状況確認を行ってほしい、という切実なものであった。

言葉の話せない子どもたちがこのようにグルグル巻きにされていた。これは、当時の実際の保育現場での写真だ