2020年6月3日、栃木県宇都宮市の認可外保育施設で赤ちゃんが死亡した事件をめぐる裁判で、宇都宮地裁は宇都宮市の責任を認めた判決を出しました。その判決を不服として宇都宮市議会は即日控訴することを決定し、市が16日に控訴しました。

一体どのような事件だったのでしょうか。裁判でも、亡くなった赤ちゃんのみならず、預けられていた子どもたちに日常的な虐待が行われていたことが明らかになりました。その衝撃の保育内容について、改めてジャーナリストの猪熊弘子さんが振り返ります。

保育施設で意図的虐待が行われていた

2014年7月26日、栃木県宇都宮市内にあった認可外保育施設「託児室トイズ」(2014年12月1日に廃止)内で、宿泊保育中だった山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん(当時9ヵ月)が死亡してから、まもなく6年の歳月が経とうとしている。すでに刑事事件としての裁判は終了し、経営者だった木村久美子被告は、保護責任者遺棄致死などの判決を受け、懲役10年の刑に服している。そして、この6月3日には両親が久美子受刑者を含めた経営者一族4名と、施設の監督責任がある宇都宮市に損害賠償を求めた民事裁判の判決が宇都宮地裁であった。

元気だったころの山口愛美利ちゃん 写真/遺族提供 

判決は受刑者と会社側に約6300万円の支払いを命じたが、そのうち約2100万円を宇都宮市が支払うよう命じるという画期的なものであった。宇都宮市には施設内での虐待について複数の通告があったにもかかわらず、事前通告を行った上での簡単な立ち入り調査しか行っていなかったことが明らかになっており、判決ではその違法性と過失を重く認定している。国家賠償法に基づき認可外保育施設に対する自治体の指導監督の責任について明確にした判決は、非常に重要な判例になるであろう。

筆者はかれこれ20年近く保育事故と関わって来たが、この愛美利ちゃんの事件は、本来子どもを守るべき保育施設で、意図的な虐待が行われていたという意味で、最も起きてはいけないひどい事件である。事件についてもう一度、判決を元に詳しく振り返ってみよう。

会社を経営している愛美利ちゃんの両親は、泊まりがけの出張業務のため、2014年7月23日〜26日まで3泊4日の予定で愛美利ちゃんをこの施設に預けていた。お迎えに行く予定の26日の午前5時半ごろ、愛美利ちゃんはベッドで息をしていない状態で発見された。午前5時58分に救急隊員が到着したときには全身に死後硬直、死斑が生じている状態で死亡が確認された。救急搬送すら行われない状態だったという。

宿泊保育の期間中、愛美利ちゃんが過ごしていた部屋には、7月末日の暑さの中、エアコンは設置されていたものの電源は入っていなかった。愛美利ちゃんは14回もの水様便があった上、25日の午後0時の時点で38.1℃の熱があり、唇が乾燥し、ぐったりするなど明らかな脱水症状の症状があった。それにもかかわらず、愛美利ちゃんは、病院に連れて行かれることもなく放置され、亡くなったのである。司法解剖の結果、死因は熱中症とされている。他の、言葉の話せない子どもたちも同様に、大人用のワイシャツなどでグルグル巻きにして動けないようにされていたことも判明した。