アパレル「大量の売れ残り」はどこへ消えるのか…その意外すぎる「現実」

もはや「正価」販売は風前の灯へ
小島 健輔 プロフィール

アパレル商品はロットが大きくなると生産仕掛かりから販売まで半年から一年近くを要するから、大量生産した在庫をシーズン直前に国内倉庫に移送するまで、コストが格段に安い生産地倉庫に保管する必要がある。

SPAと言われる両社だが、良品計画は生産子会社に、国内ユニクロは商社に生産地在庫を抱えさせている。中小のSPAやアパレルメーカーは専門商社やOEM業者にその役割を担わせており、コロナ危機では大量の未引き取りが発生した。そんな未引き取り商品は来シーズン、素知らぬ顔で新作品として店舗やECに投入されることになるのだろう。

これら生産地に抱えた在庫まで含めると、国内需要の倍どころではない数量が国内向けに生産されているのが実情で、過剰在庫は生産地からドミノ倒しに積み上がっており、超法規的あるいは超自然的カタルシスによるしか、その解消は不可能なところまで来ていた。そこに起きたコロナ危機という大厄災が、期せずしてこの情況を一掃するかもしれない。

 

もはや「正価」など有名無実

コロナ休業で二ヶ月近く売上が激減し、多くのアパレル企業が行き場を失った在庫の換金を急ぐ中、営業再開と同時にセールに入るブランドも多く、百貨店や駅ビルなど館側も今夏は統一セールを見送り、各ブランドの懐事情によるセール展開を容認している。

休業期間中もECでは5割引どころか7割引も珍しくないほど叩き売り状態になっていたから、もはや業界はセール時期の適正化や正価販売の堅持を掲げるどころではなくなっている。

これまではブランドイメージにこだわってセール時期を遅らせたり、二次流通業者への放出も拒否してきたブランドも背に腹は変えられず、セールを早め二次流通に大量放出しているから、もはや「正価」販売という建前は風前の灯と化している。

コロナ危機を契機にアパレル業界の過剰供給が多少は是正されるにしても、長年の過剰供給で流通在庫も消費者のタンス在庫も積み上がっており、新規商品は流通在庫や中古品という自ら作り出したゾンビたちと価値と価格を張り合わねばならない。格段に割安なゾンビ商品が溢れる中、「正価」など有名無実と化していくのだろう。

(株)小島ファッションマーケティング 小島健輔