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なぜ人は「他人にレッテルを貼る」のか? 具体⇔抽象で解く人間関係

『問題発見力を鍛える』vol.19
なぜ人はついつい他人にレッテルを貼ってしまうのか?細谷功氏の連載『問題発見力を鍛える』、今回は「具体と抽象」を意識することでコミュニケーションの問題を解決する方法を伝授します。

なぜ人はレッテルを貼ってしまうのか?

具体と抽象のギャップが生み出す問題について前回お話しましたが、この具体と抽象のギャップが恒常的に起きる状況が日々のコミュニケーションにおいて頻繁に見られます。これは構造的な原因があるために簡単になくなることはなく発生し続けることが予想されます。

 

したがって、この根本的なメカニズムを理解していると日々の問題を見つけて対処することが可能になります(上記の通り「根本原因を断つ」ことは不可能に近いので、根絶することは困難ですが)。

ビジネスでもしばしば起こるコミュニケーションの問題(photo by iStock)

具体と抽象のギャップが恒常的に生まれる原因というのは、私たちが持っている認知の癖にあります。それは、「他人のことは抽象的に一般化する一方で自分のことは具体的にとらえる」あるいは、「他人のことは抽象化するのに、それを自分に対してやられると違和感を感じる」ということです。

「他人にレッテルを貼る」という表現がありますが、これがまさに他人を抽象化してとらえることの別の言い方です。

レッテルを貼るというのは、例えば「あの人は右寄りだから」とか、「あの人は帰国子女だから」とか、「あの人は金融業界の人だから」といった形で、その人個人の性質を一般化してカテゴリーとしてとらえることを意味します。

「あの人はすぐに人にレッテルを貼るからなあ」という発言は「他人は一般化する代わりに自分が一般化されることを嫌う」ことを典型的に示しています。

自分にレッテルを貼られることの不快さを表現する、まさにその発言の中に「あの人はレッテルを貼る人だ」というレッテルをその人に対して貼ってしまっている……。そういう自己矛盾に陥っていることにその本人も気づいていないという滑稽な状況は先の思考の癖から生まれます。

知識がある領域は細かく、ないところはおおざっぱに

他人は一般化するが、自分は具体的にとらえるという事象をもう少し別の視点から見てみます。私たちは、自分がよく知っている領域に関してはものごとを細かいメッシュでとらえるかわりに、知らない領域はおおざっぱにとらえるという癖があります。

例えば普段ビジネスの世界以外で生きている人たち(学校・病院関係者等)からすれば、会社勤めをしている人はみな「ビジネスの世界の人」とか「企業の人」というくくりでとらえるかも知れません(逆も然りです)が、当の会社勤めの人からすれば、「メガバンク」と「ITベンチャー」では大きな違いがあり、営業と経理でも「全く違う」仕事だという認識になるでしょう。