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コミュニケーション・ギャップは「具体と抽象」を常に意識すれば解決する

『問題発見力を鍛える』vol.18
新型コロナをめぐって、様々な「専門家の見解」や「現場の声」が交錯し、大きな混乱となりました。異なる様々な「各論」と「総論」の関係をどう考えればいいのか? 細谷功氏の連載『問題発見力を鍛える』、今回は人間の「具体と抽象」による認識がもたらす問題を明らかにします。

具体と抽象の関係がもたらす「総論賛成各論反対」

前回は人類が持つ知的能力の代表ともいえる抽象化による「線を引く」という行為が問題を解決すると同時に別の問題を作り出すお話をしました。引き続いて今回は「具体と抽象」が生み出す別の問題について解説します。

人類の知的能力は「抽象化された世界」という目に見えない膨大な世界を頭の中に生み出しました。これによって複数の事象をまとめて扱うことで応用を利かせる能力を身に付けた半面で、目に見える具体的な世界との決定的な対立構造を生み出すことにもなりました。

 

一つ例を挙げましょう。私たちの身の回りでは、よく「総論賛成各論反対」という構図が起こります。これが具体と抽象が生み出す恒常的な問題発生の構図の典型的な事例です。

例えば、新型コロナ対策で「困っている人やお店や会社を助けよう」という総論(=抽象)に関して反対する人はいませんが、「ではそれは一体誰と誰なんだ」という具体論に入った途端に前回お話した「線引き問題」が発生して一切議論が収束しなくなります。

新型コロナの被害、誰をどこまで守るべきか?(photo by iStock)

このような「総論賛成各論反対問題」は政治に関してはあまりに頻発する問題です。

「全ての国民に平等な教育機会を」という総論に賛成する人は一人もいませんが、「では一切の入学試験をなくして抽選にしましょう」といえば、「努力した人もしていない人も同じ扱いをするのが平等なのか」という話になり、「予算を適正配分しましょう」には誰も反対する人はいませんが、「その結果あなたの部署の予算は削減します」と言われたとたんに反対者が続出するのです。

予算の話がわかりやすいですが、総論というのは、簡単に言えば皆が皆「自分が得をするように」良くも悪くも「勝手な解釈」が可能であるのに対して、各論というのは具体的であるがゆえに解釈の自由度が下がり「損をする人」も明確にあぶりだされてくるのです。