ドイツ人記者が驚いた日本の「自粛警察」

規則違反者への憎悪
フェリックス・リル プロフィール

忖度とファシズム

その際、政府がこのような威圧行為を煽っている面もある。たとえば大阪府知事は最近、緊急の休業要請にもかかわらず営業を続けていたパチンコ店のリストを公表した。

「これは営業を続ける店舗を攻撃するようけしかける直接の要請ではありません。しかし間接的にはそういう要請になっています」と田野氏は述べる。

多くの経営者が店舗の営業を続けるのには、経済的な理由がある。つまり休業が政府の命令ではなく、あくまで要請でしかないため、経営者は十分な損失補償が受けられず、わずかな支援金がもらえるだけなのである。

十分な補償がなされていない〔PHOTO〕Gettyimages
 

ドイツと同じく日本の警察も、隣人の些細な違反行為や許可されるギリギリの行為を中傷する人々からの通報が増えていると報告している。

しかし、日本とドイツでは状況が異なるようだ。田野氏によれば、日本では単なる要請であっても従う人が多いのに対して、ドイツでは新しいルールが法的効力を持つまではそれに従う人は少ない。

このような「忖度」(ドイツ語では「先回りの服従」と表現される)がドイツよりも日本で顕著に見られることからも、今日の日本はよりファシズムの傾向が強い社会であると田野氏は述べる。

政治学者の間でも、ファシズムの定義については見解が分かれている。しかし一般的には、明確なヒエラルキーを前面に出し、それへの服従によって集団をまとめあげる考え方を指すのが普通である。

しかもこの集団は、人々がアウトサイダーにルサンチマン(怨念)を抱くことによっても強化される。コロナ危機にあっては、アウトサイダーとはどんな理由であれ要請に従わない人たちを指す。