ドイツ人記者が驚いた日本の「自粛警察」

規則違反者への憎悪
フェリックス・リル プロフィール

この実験で、田野氏は自ら独裁者となり、受講者に制服の着用とナチス式の敬礼を義務づける。「いくつかの段階を踏むごとに、一体感が強まってきます」と田野氏はビデオチャットで説明してくれた。「少しずつ参加者に指示を与えます。たとえばキャンパスでいちゃついているカップルを糾弾せよといった指示です」。

その結果は恐るべきものだった。参加者はヒエラルキーと集団意識の力によって抑制を失い、どんどん過激になり、アウトサイダーを攻撃するようになったという。

模擬的に行われているという違いを除けば、最近この国で起こっていることと何か似たところがあるのではないだろうか。

たとえば東京のある居酒屋の店主は最近、店のシャッターに「この様な事態でまだ営業しますか?」と書かれた紙が貼られているのを見つけた。店主が規則を守れば特定の時間は営業できる旨の返答を貼りつけると、その上に短く「バカ」と落書きされた。

〔PHOTO〕iStock
 

千葉県でも先日、駄菓子屋で匿名の手書きの「コドモアツメルナ オミセシメロ マスクノムダ」という貼り紙が見つかった。ところが、店主は3月以降この店を開けていなかった。

「このような威圧行為の恐ろしい点は、違反行為が存在しなくても発生することです」と田野氏は述べる。安倍晋三首相が4月初めに全国に緊急事態宣言を発令したことで、各都道府県には店舗の閉鎖や厳しい外出制限を課す権限が与えられたが、実際には要請や勧告にとどめるケースがほとんどだったのである。