6月20日 日本ウイスキーの父、竹鶴政孝が誕生(1894年)

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

1894年の今日、日本ウイスキーの父と呼ばれる酒造家(ウイスキー製造技術者)、竹鶴政孝(たけつるまさたか、1894-1979)が、島県賀茂郡竹原町(現・竹原市)に生まれました。

数年前に連続ドラマのモデルとして取り上げられ、その生涯が広く知られるようになった人物です。

【写真】竹鶴 政孝
  竹鶴政孝 photo by gettyimages

政孝は、広島県竹原市で江戸中期から製塩業や酒造業を営む竹鶴家に生まれました。竹鶴家では、灘の酒に負けない高品質の酒を作ろうと製品改良に励み、やがて品評会などで上位を独占するようになりました。こうした酒造りは、品質に対する厳しい目が必要とされ、政孝もこうした家風の中で育てられました。

大阪高等工業学校(現・大阪大学工学部)の醸造科に進学、卒業を待たずに摂津酒造(後に宝酒造に合併)へ入社しました。当時、まだ“新しい酒”だった洋酒に興味を持っていた政孝は洋酒部門を希望し、希望通りの配属ののちに若くして主任技師に任じられました。

酒造技術者としての力量を見込んだ社の勧めで、政孝はスコッチ・ウイスキー研究のためにスコットランド留学。グラスゴー大学で応用化学と有機化学を専攻し、蒸留所で実習を積みました。この研究が国産ウイスキーの礎となったと言われています。

【写真】スコットランドの蒸留所の釜
  スコットランドの蒸留所にある19世紀中頃に設置されたという釜 photo by gettyimages

正孝は1920年に帰国しましたが、第一次世界大戦後の戦後恐慌により摂津酒造でのウイスキー製造はならず、かわって寿屋(現・サントリー)がウイスキー部門の開発を依頼します。政孝は当初、スコットランドに風土環境が近い北海道での製造を希望していましたが、輸送コストなどで折り合いがつかず、良質な水が使える大阪府島本村(現・島本町)の山崎に製造拠点を定めました。

工場や製造工程などすべて政孝の指示のもとに作られましたが、国内初の本格的ウイスキー工場の建設は、多くの苦労がともなったとのことです。

醸造には酒造の勘を生かすべく、実家の竹鶴家から杜氏を呼ぶなどのこだわりを見せましたが、出荷を急ぐ寿屋や出資者からの催促もあり、必ずしも満足ばかりでもなかったようです。

山崎蒸留所製品は、1929年4月1日に「白札」として発売されました。

【写真】竹鶴を囲む操業を開始時の山崎蒸留所従業員
  操業を開始したころの山崎蒸留所従業員。前から3列目中央の髭を蓄えた人物が竹鶴と言われる photo by gettyimages

ウイスキーは、大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を麦芽の酵素で糖化し、これをアルコール発酵させ蒸留した蒸留酒です。15~16世紀ごろに、スコットランド、アイルランドで生まれたとされていますが、明確にはされていません。

麦芽を糖化させた麦汁を発酵させ、蒸留窯で数回の蒸留を経たのち、樽で寝かせて作られます。蒸留後は無色透明で、独特の色と風味は樽で寝かせるエイジングで生まれます。

大麦だけを原料にしたモルトウイスキー、大麦に小麦やライ麦などを使ったグレーンウイスキーがあり、両者をブレンドしたものが一般的です。

スコッチウイスキーでは、蒸留所それぞれのウイスキーをブレンドして製品化しますが、日本では蒸留施設と銘柄が同じ製造者に属するため、1つの蒸留所で多種の原酒を蒸留することが一般的となっています。

日本ウイスキーの道を切り拓いた政孝は、その後、北海道でリンゴジュースを生産する大日本果汁を興します。同社は後にウイスキー製造に参入、ニッカウヰスキーとなります。

【写真】ニッカの樽
  今日も時を刻むニッカの樽 photo by gettyimages

政孝は、ウイスキー製造においてはもちろんですが、リンゴジュースの製造においても100%果汁にこだわりました。できあがったジュースは他製品に比べ高価な一方、沈殿物などで見た目が悪く敬遠されたと言います。品質を大切にする生家の家風から由来したであろう、水や素材、作る環境までにこだわった彼らしい話です。

私も、地球に来てウイスキーが大好きになりましたが、最近は肝臓を大切にするよう言われて、ちょっと控えめにしています。え、火星人に肝臓あるのかって? 火星人における肝臓の解剖学的知見については、またいつかお話ししましょう。

飲む時の蘊蓄にも重みが増すとか!?

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