Photo by iStock

1948年に廃止された、オリンピック「幻の種目」をご存じか

芸術を競い合う

「美であり善である」の精神性

史上初となるオリンピックの開催延期が決定されてから早くも2ヵ月が経過した。本来であれば、7月24日の開幕に向けて盛り上がりは最高潮に達していただろう。

現在の五輪の原型となる古代オリンピックが初めて行われたのは紀元前776年のこと。古代ギリシャにて全知全能の神・ゼウスに捧げる祭りとして始まった。以降、4年に一度のスポーツの祭典として定着する。

Photo by Getty Images

古代ギリシャ内では都市間の争いが絶えなかったが、オリンピックの開催期間には1ヵ月から3ヵ月の「聖なる休戦」と呼ばれる休戦期間が設けられたという。また、参加者に対しては「美であり善である」高い精神性が求められた。五輪=平和や道徳を重視する祭典というイメージはここから始まっている。

古代オリンピックは、ギリシャがローマ帝国の支配下に置かれる起源393年まで続いた。それから1500年以上が経過したのち、オリンピックは一人の男の手で復活を遂げる。

 

復活を後押ししたのはフランスの教育者・クーベルタン男爵。古代ギリシャの文化に強い関心があった彼は、世界の人々の賛同を取り付け、1896年にギリシャのアテネで第1回近代五輪大会を開催した。

彼はスポーツは人間の精神を高めるものだと考えた。それと同時に、芸術の分野で努力することも人間性を高めるに違いないとも考えたのだ。

彼の意向を受けて、1912年のストックホルム大会から「建築」「彫刻」「絵画」「音楽」「文学」の5つの芸術種目が正式に競技化される。参加者はスポーツに関心があること、作品はスポーツに関連するものであることが出場の条件とされた。

客観的な採点が困難なことから1948年ロンドン大会後は正式種目から外されてしまったが、現在も五輪開催地でスポーツに関する芸術作品の展示は続いている。

ちなみに「文学」で初の金メダルを獲得したのはクーベルタン男爵。近代五輪の父も、一度はメダルを手にしてみたかったのかもしれない。(富)

『週刊現代』2020年6月13日・20日号より