先生に「寄り添う時間」がない

インドのおばちゃん、そして僕の父。
大人が寄り添う力を持てば、子どもの学ぼうとする意欲を引き出せるのです。

しかしながら、今の先生たちには、子どもに寄り添う余裕がありません。英語、プログラミングと新たな単元が増えたうえに、さまざまな生きづらさを抱える家庭や、配慮が必要な子どもに心を砕き、時間を使わなくてはなりません。

そのなかで、コロナ後には授業時間が増えます。1時間目から6時間目をひとりで授業することは可能でしょうか?

例えば「今日の2時間目の算数は、YouTubeですごく上手に教えられると人気の鳥取県の先生の授業につないでみよう」と呼びかけます。わかりやすく楽しい。そのうえ、自分の担任と違う先生の授業は子どもたちにとっても新鮮です。だから子どもたちは熱中します。
また違う日は、北海道の○○先生の国語。△△先生の社会の授業を見せます。
時に、ビデオを止めて「これ、どう思う?先生はさ」と先生が入って行ってもいいでしょう。

このように、さまざまな先生の授業を受けることで、担任は子どもたちの中で神格化されずに済みます。その先生だけの価値観、教え方、学びといった「学級王国」の王様にならずに済むのです。

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教師の成長にもなる

一線級の授業を見せてもらえるのは、親だって嬉しいはずです。そして、次に出てくる効果は、教師の成長です。
「僕もこういう授業をやりたい」「私はここなら負けない」「ここを工夫すればかなり近づけそう」
そんなふうに、授業がブラッシュアップされます。

授業が上手な先生は、子どもたちへの質問が上手です。ティーチングではなく、ファシリテーティングに長けています。そこを吸収していけば、長く課題とされている教員の指導力も伸びるはずです。

つまり、オンラインとのハイブリッドにすれば、先生に余裕ができ、なおかつ先生自身が自身の授業力や指導力を大きく向上させられる
アフターコロナは、そういう世界をつくっていかなくてはいけないと思います。

ご存知のように、子どもたち一人に一台デジタル端末を配る国のGIGA構想は、コロナ禍に入ってすぐに2023年度開始までの達成目標が、2021年度開始までと大きく前倒しされました。国費が投入され、すでに学校にフリーWi-Fiを入れるなどネット環境の整備に予算を割くことを決めた自治体も現れ始めました。

いくつかの自治体がすでに配布してはいますが、2020年度中に日本のすべての子どもが学校からパソコンを持って帰ってくる日も近いでしょう。

ぜひ、「先生が教える」を少なくして、「自ら取り組む」を増やしましょう。学校や保護者がそこを意識出来たら、コロナ禍は日本の教育にとってピンチではなく、チャンスになりえます。

ボスニア・ヘルツェゴビナにご両親(写真奥の右のお二人)と旅した時、オシムさんご夫婦(写真手前)と。こうして興味の種が花開いたのは、個人を尊重しながらも可能性を探してくれた絶妙な距離感にあったのではないだろうか 写真提供/森田太郎

(構成/島沢優子)

森田太郎さん連載「タロー通信 風のとびら」今までの連載はこちら