温泉旅館がサテライトオフィスに!?コロナ後を見据えた斬新な挑戦

嬉野と草津の若手経営者の戦略
山崎 まゆみ プロフィール
 

20代が草津温泉に殺到する理由

「いま旅館は素泊まりのスタイルが三密を避けやすいんです」と言うのは、群馬県草津温泉の小林恵生社長だ。

小林恵生社長

小林社長は、湯畑を望む部屋が売りで1泊2食付きのいわゆる伝統的な旅館「奈良屋」、温泉リゾ―トホテル「草津ナウリゾートホテル」、素泊まりの宿「湯畑草菴」「源泉一乃湯」、カフェ形式の宿「湯川テラス」と5つもの宿泊施設を営んでいる。

草津温泉の湯畑

「接触による感染拡大への防止策として、素泊まりスタイルが有効とされています」

お客とスタッフとの接触が少ない、夕食時にお客の行動が重ならないというのが、その理由だ。さらにスタッフが少人数で済むので、宿側の対応もシンプルにできる。

「こちらの事情を言えば、1泊2食の施設に比べると固定費が格段に少ないため、集客減という状態でのコストコントロールもしやすく、利益回復も早いです」

小林社長によれば、アフターコロナには「素泊まり」「プレミアムな1泊2食」の二極化の時代がやってくるという。

小林社長は「温泉らくご」を2009年に立ち上げ、草津には欠かせない名物に育てた。この間の草津温泉の町の変遷もつぶさに見てきた。

草津温泉名物の「温泉らくご」

そもそも小林社長が草津温泉に素泊まりの宿「湯畑草菴」を作ったのが8年前の2012年暮れ。「湯畑草菴」オープン以降、草津以外の温泉地でも、素泊まりの宿が増えた。その後、草津温泉では、1泊朝食付きという宿泊スタイル、通称「イチアサ」も生まれ、この2つの宿泊形態が定着した。

生まれ変わらせるチャンス

実は新型コロナが蔓延する前には、素泊まりと1泊朝食付きの「イチアサ」が、オンライン上の数字では、草津温泉の宿泊客の30%を占めていたと言う。

「お客様が2泊したい場合は、どうしても2日連続した休みを取らないといけませんでした。宿での夕食の時間という縛りがあるからです。この縛りがなくなると、金曜に仕事を終えてから宿に入って頂ければ、金曜、土曜の2泊が可能です。素泊まりや『イチアサ』を利用した客層は若者で、これにより草津温泉に若者が増えたんです」

どこの温泉地も観光地も、どうしたら若者層が取り込めるかを思案する中で、見事な成功例である。草津温泉も、15年前は60%が55歳以上のお客だったが、コロナ禍前は60%が20代が占めた。素泊まりと「イチアサ」の宿泊スタイルの定着で大きな変化が生まれたのだ。

草津温泉には年間200万人が宿泊する。そのうち60万人が夕食を宿の外、つまり草津の町で摂ることになる。

「これまでと比べて、夜も営業する飲食店が増えました。今後も、この傾向は続くと予想されますので、外食できる店と席数を増やしていく必要があります」