劇場再開後も問題は山積み。コロナ禍のハリウッドで起きていること

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宇野 維正 プロフィール

今年8月に超目玉作品となるマーベル・シネマティック・ユニバースの新作『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の配信開始を控えているディズニープラスの契約者数は北米でのサービス開始から5ヵ月が経った今年4月の時点で早くも5000万人を突破し、後発サービスの中では圧倒的な強さを見せている。となると、何社かの映像ストリーミングサービスがジリ貧になることは現時点でも容易に予測ができる。

今後の生き残りをかけて、2017年にディズニーがフォックスを買収した時のようなエンターテインメント業界全体を巻き込む大変動が、今度はハリウッド・メジャーの枠を超えて起こるかもしれない。

ハリウッドがこれから直面する大問題

無事にコロナ禍が過ぎ去ったとしても、ハリウッドは半年近く撮影が止まってしまった作品の製作をいかにレールに戻すかという大問題に直面する。

前回、ハリウッド映画の製作現場が深刻な危機に陥ったのは、リーマンショックと同時期に起こった2007年から2008年にかけての全米脚本家組合ストライキだった。

数年後にほとぼりが冷めてから作品に関わっていた監督やキャストが次々に内情を明かしたところによると、その当時製作された『007/慰めの報酬』や『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』や『トランスフォーマー/リベンジ』といった作品では、監督やキャストがその場でセリフを考えるなどの大混乱が起こっていたという(それは作品の質にもストレートに反映されていた)。

そして、その頃を境に、大人の観客は映画よりもテレビシリーズの視聴により長い時間を割くようになり、メジャースタジオは中国やインドなどの新興マーケットにむけてよりシリーズ志向&大作志向を強め、デヴィッド・フィンチャーやスティーヴン・ソダーバーグを筆頭にそれまで映画界をリードしてきた何人かの監督はハリウッドを見限るようになった。

産業の面においても、作品の質の面においても、今回のコロナ禍が映画界にどのような変化をもたらすことになるのか、その全貌が明確なかたちとして表れるのは数年後になるだろう。現段階で一つだけ言えるのは、その変化は映画の歴史上最もドラスティックな変化になるということだ。

宇野維正・田中宗一郎著、新潮社、1,870円