劇場再開後も問題は山積み。コロナ禍のハリウッドで起きていること

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宇野 維正 プロフィール

具体的に言うなら、一つは先に挙げたAmazonによるAMCシアターの買収の噂に代表される、コロナ禍によって明(契約者急増)と暗(財政難)にはっきりと分かれた、大手映像ストリーミングサービスによる劇場の買収だ。

Netflixは昨年ニューヨークの老舗映画館パリス・シアターを買収したのに続いて、今年6月にはロサンゼルスの老舗映画館エジプシャン・シアターを買収。AmazonやNetflixにとって劇場の買収は、自社オリジナル作品がアカデミー賞をはじめとする映画賞レースで規定を満たすために上映館を確保するという目的に加えて、運営の仕方によっては映画産業、映画文化への支援をアピールすることもできる。

実際、Netflixはこれまで非営利団体アメリカン・シネマテークが上映会をおこなってきたエジプシャン・シアターの役割はそのまま継続させて、上映会と重ならない平日のみ自社作品のプロモーションなどに活用する方針を発表している。

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また、そんな大手映像ストリーミングサービスの動きを牽制するかのように、昨年末、1948年に制定されたパラマウント協定(メジャースタジオが劇場を所有することを独占禁止法で禁じたもの)を無効にするための動議が議会に提出されていて、コロナ禍によって多くの劇場が財政難に陥っている今、その動向に大きな注目が集まっている。

日本にいると映画会社が系列のシネコンチェーンを運営するのは当たり前のことと思えるかもしれないが、公正な映画マーケットを形成する上では様々な障害がある。しかし、米国でも数年以内にディズニーのシネコン、ユニヴァーサルのシネコン、ソニーのシネコンなどが生まれるかもしれないのだ。

もう一つは、ここ数年何度か話題に上がっていて、今回のコロナ禍でも再浮上したアップルとディズニーの合併の噂に代表される、より大きなフレームにおける巨大IT企業とハリウッド・メジャーの協業だ。

NetflixとAmazonに対抗すべく、昨年から今年にかけてハリウッド・メジャーはディズニープラス(ディズニー)、HBOマックス(ワーナー・ブラザーズ)、Peacock(ユニバーサル・ピクチャーズ)と、自社の系列ストリーミングサービスを次々に立ち上げた。

一方、同じく昨年ローンチされたアップルTVプラスは、スティーヴン・スピルバーグをはじめとする著名クリエイターとの独占契約は交わしているものの、契約者数で大きな遅れをとっている。

ケーブルテレビからストリーミングサービスへの映像コンテンツのインフラ移行はもはや決定的な流れだが、そこで多くの視聴者が利用するのは多くても3社から4社程度だと言われている。つまり、既にNetflixとAmazonを利用していれば、残るパイは一つか二つしかないということ。しかも、そこにはスポーツ中継専門のサービスも分け入ってくる。