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「人種」という言葉自体を「人種差別的」だとする考え方もある

移民大国ドイツの複雑な「差別」事情

「人種」という言葉の意味

ドイツ基本法(憲法に相当)の第3条の第3項の第1文は、次のように規定する。

「何人も、その性別、生まれ、人種、言語、故郷及び家柄、その信仰、宗教上または政治上の見解を理由として、不利益を受け、または優遇されてはならない」

基本法は、戦後、1949年に制定されたが、おおよそは以前のワイマール憲法を引き継いでいる。しかし、この第3条は、ナチのユダヤ人迫害に対する反省が考慮され、「人種」という言葉が重要な意味を持っていたという。

ところが、現在、緑の党が、この基本法3条の文章から「人種」という言葉を削除するべきだと言い出した。なぜか?

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彼らの考えでは、「人種」と言う言葉自体が「人種差別的」であるからだそうだ。緑の党の主張によれば、人種というものは存在しない。

ヒト科のなかのホモ属の一つの種がホモ=サピエンスで、現在地球上に存在するヒトはすべてホモ=サピエンス。だから、人種があるとすれば、一つだけ。そのホモ=サピエンスの中で肌の色や見かけが違っても、これは生物学、人類学上の「人種」ではないという理論だ。

つまり、見かけを基に「人種」として分類するのは時代錯誤であり、誤りであり、差別的であるということになる。

現在、アメリカで起こった人種差別反対のデモが、ドイツにも広がっている。ドイツは移民国なので、国籍はすでにドイツでも、肌の色の違う人たちがたくさんいる。その人たちと、元々のドイツ人が一丸になって、差別を無くせという運動が盛り上がっている。

 

その一環として、やはりアメリカと同じく、ドイツの警察も批判の標的になっている。具体的には、たとえば、パトロールの警官が、中東出身っぽい人、アフリカ出身っぽい人たちを選んで職務質問するのは差別だ、とか。

ただ、警察の職務質問で一定の風貌の人たちが標的になるというのは、見方によれば、怪しい人を職務質問したら、結果的に一定の風貌の人たちになったということは考えられないか。私は外国人として長くドイツに暮らすが、警官の外国人差別など見たことも聞いたこともない。

だいたい、ドイツの警察は権威主義ではなく、それどころかドイツというのは、警官がデモ隊から暴行を受けても問題にならないが、反対にデモ隊に怪我をさせたりしたら非難轟々になるようなお国柄なのだ。

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もちろん、そんなドイツにも人種差別は間違いなくあるが、警察をその加害者にするには無理がある。ドイツ国民の警察に対する信頼はとても厚い。

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