会わないと分からない自分の状態

この電話のあと、すぐに事務所で打ち合わせをすることになりましたが、まだ車椅子で公共交通機関を使う事に慣れていなかったので、タクシーで向かいました。折り畳み式の車椅子を収納できるタクシーを予約したのですが、楽だと思ったら大間違いでした。タクシーのシートの角度で座ると、健康な時には無かった「固まってしまう現象」が起こるのです。10分毎くらいに足をバタバタさせたり、お尻の位置を変えたりしながら工夫しました。車椅子に座っている場合、「固まってきたな」と思う頃に1回立ち上がらせてもらうとその固まりを「解除」できるのですが、タクシーの中だとそうはいきません。乗ってみて初めて分かったことでした。

事務所に着いて皆さんに挨拶をした時点では、やはり戸惑いの空気が充満していました。しかししばらくしゃべると皆さんが言います。

こうやって座って喋っていると、全然病気にかかっているなんて思えませんね
「そうなんです、動いているところを観られると皆さん心配すると思いますが、奇跡的に声の方に影響が出ていないので、今のところお仕事は出来そうです」

事務所幹部の方々と1時間以上お話をしました。社長とは事務所設立当初の昔話も含めて、思い出話に花が咲きました。

うん、安心した、もっと悪いと思っていたが、これだけ普通に喋れるなら仕事ができる状態だと分かった
「はい、今が一番元気なのですから、できることをしっかりとやっていきたいです」
「よし、教生君のやりたいことを全面的にバックアップしよう」

ありがたい言葉をいただきました。

9月の入院中のリハビリ風景。津久井さんはこうした明るい表情を見て、変わらない声を聞くだけでは、「現状」ははっきりわからなかった 写真提供/津久井教生

すぐに事務所からレギュラーのお仕事先に連絡してもらったところ、『NHK・ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!』の制作の皆さんは「声が出る限りは出演していただくつもりでいました、一緒に頑張りましょう」と言ってくださいました。『ちびまる子ちゃん』は「声が大丈夫で良かったです、スタジオに来ていただければ無理が無いように抜き撮りします」。そして養成機関なども「無理のない範囲で講義や演出をお願いします

本当にありがたかったです。

そして役者仲間の皆さんもたくさんの素敵な反応をしてくれたのです。