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認知症で記憶の衰えた落語家が、それでも高座に上がり続ける理由

ネタ帳を持ち込んで…

人生は、二毛作

「私のやってきたお笑いというものは、ある意味、不要不急の最たるものです。前からわかっていたことだけれど、コロナのことがあって、それが余計に際立ってきました。

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これでも昔はね、偉大な人間になりたいなと考えたこともありました。偉大な人間って、いまで言ったら医者や看護師、ワクチンの研究者なんかです。私がいま若ければ、落語なんてやっていません。

こんな人間ですから人様に何かを残すとか、教えてあげるというのもおこがましいですけれど、人はどうせ最後は灰になるんですから、興味をもったことはなんでも飛びついて、夢中になって楽しむこと。これが自分らしい人生を生きるコツだと思いますよ」

 

こう語るのは、落語家の三遊亭圓丈さん(75歳)。'17年には医者から「認知症の薬を飲まないと高座で何も話せなくなる」と警告を受けた。

「認知症は不便だけどイヤだとは思っていません。記憶力が減退しているのは仕方ないことですし、ネタ帳やタブレットPCを高座に持ち込んでいます。カッコ悪いですけれど、だんだん死期が近づいているんだなと感じながら噺をしている。

実は私のギャグや落語はね、お客さんのためのものではないんですよ。たくさんのお客さんを笑わせたいというよりも、自分が心から面白いと思えるネタを出したいと考えてやってきました。それでお客さんが笑ってくれれば一番いいですけれどね」

圓丈さんは自分の面白いと思ったことをとことん追求してきた人だ。野球、コンピュータゲームから神社の狛犬まで興味のあることならなんでも首を突っ込んで、気の済むまで研究した。