先が見えない時代、人間にとってもっとも大切なことは何か。自然の脅威、テクノロジーの進化をどう受け入れ、どう豊かに生きるか。京都大学総長・山極寿一さんの新著『スマホを捨てたい子どもたち』(ポプラ新書)から一部抜粋でお届けします。

「人間が真につながれる数の限界は150人」だと言う山極さん。SNSなどを通じて不特定多数とつながれる現代社会に警鐘を鳴らします。

その「つながっている」感覚は本物なのか

情報通信技術の発達によって、継続的な身体のつながりで社会をつくるという、人類が何百万年もかけてつくり上げてきた方法が崩壊しかけています。一人一人の人間が、家族や地域などのコミュニティから引きはがされてバラバラになったことで、これまで信頼関係で結ばれてきた共同体が機能しなくなっている。

インターネットは、継続性だけは保証しました。インターネットで情報を交換し合っていれば、絶えずつながっていると思うことは可能だからです。ライン、ツイッターといったツールを通じて、時間や空間を軽々と超えて常時つながっている感覚を得るようになりました。でも、それは言葉をはじめとする「シンボル」を通じてつながっているだけで、身体がつなぎ合わされているわけではありません。

写真/楠本涼

スマホを通じたコミュニケーションでは、ダンスによる同調のように、同時に行うこと、同時に感じることができません。スマホの動画の中で人が動いていたとしても、それは記録されたものであって生身の動きではありません。たとえそれがライブであったとしても、自分の都合で止めることができます。記録されたものは、逆に延々とリピートすることもできます。それは、自分だけの時間だからです。

一方、リアルな社会は現在進行形がずっと続いていて、振り出しに戻ることができません。現実というのは、自分の時間であるとともに相手の時間でもあります。そのため、「時間を共有している」という感覚は自分だけの都合で続けることはできません。いつか終わります。