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定年後、口を開けば「自慢だらけ」の人を周囲はこう見ている

それは、不安の裏返し…

つまらない「私の履歴書」は書かない

「リタイアして隠居生活が始まったら、自分には何もなくなると思い込んでいる方は少なくありません。しかしそれは誤解です。そう考えるから、過去の自分に執着する気持ちが生まれてしまう。

私が主宰している考古学や古代の研究会の会員は中高年の方が多いのですが、入会した当初は退職したてで、尖っているところが残っています。だから、たとえば『自分はビルの管理会社で働いていて、大掛かりな仕事の責任ある立場にいた』というふうに、これまでの自分の功績を話したがります」

長年、俳優として活躍するかたわら、民間考古学者として、40年近く遺跡を追い続ける苅谷俊介さん(73歳)はこう語る。

 

たしかに、口を開けば現役時代の話をする人は多い。誰とは言わないが、自慢話だらけの日経新聞「私の履歴書」ほど、みっともないものはない。まさにそれと同じ。そうした自慢話の多くは、「不安」の裏返しでもある。

「よく、サラリーマンの人は退職すると、第二の人生が始まると言いますが、人生は一つしかなく、進むレールは同じです。別の列車に乗り換えて、まっさらな道を進まなければならないと思って身構えてしまうから、不安な気持ちが拭えないのでしょう」

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苅谷さんの研究会では、参加した当初こそ、自分の現役時代の功績を心の拠り所にしている人も、次第に自分の過去に執着しなくなっていくという。

「研究会では、古代の人たちがどのような苦労や努力をしたのか、それが何をもたらしてくれたのかを学びます。

何千年ものあいだ脈々と続く人間の営みに思いを馳せていると、だんだんと知識を蓄えるだけでなく、歴史に対する感性も芽生え、『昔の人はこんな大変な暮らしをしていたのか』という感情が湧いてくる。すると不思議なことに、誰もが自分の経歴について話さなくなります。