アパホテル〈新大阪駅前〉外観 *アパホテルズ&リゾーツ プレスリリースより
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「一泊2500円」がなぜ可能か?「アパホテル」常識破りの経営戦略

あの手この手で利益を確保している
6月30日までの期間限定だが、「一泊2500円」で泊まれるという前代未聞のキャンペーンをアパホテルが展開している。一見、採算度外視のようだが、実は利益確保のための工夫や、今後を見据えたマーケティング戦略がこのキャンペーンには込められているという。
20年間、外資系不動産会社でホテル投資や開発のアドバイザーを務めてきた、立教大学大学院特任教授・沢柳知彦氏が解説する。

「一泊2,500円」が可能なワケ

コロナ禍でホテル業界全体が大きなダメージを受けているなか、6月30日までの期間限定ながらアパホテルの「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」の一泊2,500円(税・サ込)という衝撃的な価格設定が話題を呼んでいる。周辺のカプセルホテルよりも安い。しかも、対象ホテルの限定はなく、チェーン加盟ホテルならどこでも対象となる。

また、6月末以降も7月末までのテレワーク応援企画として、対象ホテル限定ながら、8am-7pmまで滞在可能な「日帰りプラン」(大浴場+昼食+客室利用で5,000円から)4泊5日の「5日連続プラン」(15,000円から)と破格な価格設定を行なっている。

スタンダードルームの例 *アパホテルズ&リゾーツ プレスリリースより
 

これだけ聞くと、大手ホテルチェーンがコロナ禍を機に中小チェーンに価格圧力をかけ体力勝負の戦いを仕掛けているようにしか見えない。しかし、ホテル経営学の観点からはアパホテルの深遠なマーケティング戦略と収益確保のノウハウが見えてくる。

まず、一泊2,500円のプランだが、この予約は「アパ直」と呼ばれるアパホテル公式サイトもしくは専用アプリからしか申し込めない。これが何を意味するかというと、楽天トラベルやじゃらん、あるいはJTBや近畿日本ツーリストなどの旅行代理店への販売手数料がかからない。

一般的には予約した客室料金の10%から15%程度の手数料がかかるが、多くのビジネスホテルは旅行代理店からの送客に頼らざるを得ない。この手数料を削減することができれば、客室部門粗利益の観点からは販売価格が10-15%程度高いことと同じことになる。利益確保の観点からは見た目ほどのディスカウントをしていない、ということだ。