くるぶしが少しでも見えるのは「恥ずべきこと」だった

また、アカデミー賞<衣装デザイン賞>を受賞した本作において、衣装はオルコットが生きた時代、4姉妹と彼女たちを取り巻くキャラクターたちを1つにまとめるという大きな役割を担っています。

衣装デザイナーのジャクリーン・デュランは、映画を2つの対照的な舞台に分けました。ひとつはクリエイティビティと自由が漂うボヘミアンな雰囲気のマーチ家の中。もうひとつは厳格なルールと高いリスクがあるが、より大きな可能性のある広い世界です。

19世紀後半は、織物の大量生産が可能になり、化学染料による鮮やかな色が流行しました。その一方で、くるぶしが少しでも見えるのは恥ずべきことで、コルセットとクリノリン(スカートを膨らせるための、針金などを輪状に重ねた骨組みの下着)を着用し、洋服や帽子で全身を覆うことが社会的な規範となっていました。手の込んだ装飾的なデザインもこの時代の特徴で、背景には19世紀半ば頃から普及していたミシンの存在があげられます。

『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』

クリノリンによってスカートは巨大化しますが、1860年代半ばを境に、スカートのボリュームは小さくなり、後ろにのみ膨らみをつけたバッスル型へと移行していきます。また、ドレスはワンピース型と決まっていましたが、ジャケットとスカートを組み合わせる形式のものも多く見られるようになっていきます。

アメリカ北部は急速に工業化が進み、工場で働く労働者階級が現れました。しかし、オルコット自身や『若草物語』の主な読者層だった中産階級の女性たちは、「淑女」として家を守ることが求められました。文学とファッションは無縁のように思われるかもしれませんが、空前のヒットとなった『若草物語』は、女性の身体を開放していくファッションの過渡期と重なります。