「公開処刑」が世界に流れた 

ある事件を録画した一本のビデオが全米だけでなく世界に衝撃を与えた ※1。2020年5月25日、ビデオにはミネソタ州ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイド氏(46歳)が白人警官デレク・ショーヴァンに膝で首を押さえつけられ、殺害される様子が映っていた。フロイド氏は、「I can't breathe(息ができない)」と苦悶しながら叫んだが、警官はこれを無視し、彼の首を8分46秒間、圧迫し続け殺害した。公開処刑である。ビデオはこの状況を一般人が携帯電話で録画したものである。
 
事件の翌日、数百人が現場近くで「I can't breathe(息ができない)」と書いた大きな紙を掲げ、警官の暴力に対する抗議デモをはじめた。27日に抗議デモはエスカレートし、州を超えて全米に拡大した。さらに28日には抗議デモが暴徒化した。デモ隊の一部がミネアポリスの警察署に放火し、警察署は燃え上がった。

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フロイド氏の死とよく似た事件が2014年に発生したことが思い起こされる。黒人のエリック・ガーナー氏(43歳)が白人警官にチョークホールドという絞め技で窒息死させられたのである※2。 

フロイド氏の死の2ヶ月前には、ケンタッキー州ルイビルの警官が黒人女性のブレオナ・テイラー氏(26歳)を射殺する事件が発生した ※3。女性救急救命士のテイラー氏は、新型コロナウイルスに感染した患者のケアもしていた。彼女の夢は、看護師になって家を購入し家庭を持つことだった。その彼女は、夜中に自宅アパートで恋人と就寝していたところを警官に襲撃され、少なくとも8回撃たれ殺されたのである。警察は、ドラッグの密売者を捜索中だったが、捜索する家を間違えたと発表した。あきれた言い訳である。