人生とは何か、絶対的な価値はあるのか…「根本の問い」に立ち向かう

奥田昌子さん人生最高の10冊

人間の強さに心打たれる

小さい頃、家には祖父がそろえてくれた子供向けの「世界名作全集」(講談社)と大人向けの「世界文学大系」(筑摩書房)があって、『オデュッセイア』は幼稚園のときに、講談社の全集で読みました。

とても面白かったので、小学校中学年で筑摩書房の全集に入っていた高津春繁氏訳のものを読破。この作品は叙事詩ですが、高津氏の訳は散文調で分かりやすく物語の世界を堪能できたのが幸いでした。

トロイア戦争に勝利した英雄オデュッセウスは神々の力に屈することなく、強靭な精神で自ら道を開いて故国に戻り、妻と息子と再会します。人間の強さに心を打たれました。

オデュッセイアの一場面が描かれたギリシャの切手,photo by iStock

'50年代に刊行されたこの2つの全集は、読者を教え導く姿勢が強く現れていて、人間とはどういうものか、人生とは何か、といった教訓的なメッセージが込められていたように思います。そのような本を幼い頃から読んでいた私は自然に、人間や人生について考えるようになったのです。

 

雨月物語』も初めは講談社の全集で読みましたが、高校で原文を読んだときの衝撃はいまだに忘れられません。上田秋成の言葉がダイレクトに伝わってきて、原色で描かれた絵のような鮮やかなイメージが浮かんだのです。

中でも好きなのは、「菊花の約」。丈部左門と義兄弟の契りを結んだ赤穴宗右衛門は重陽の日に再会することを約束して出雲の国に向かうが、そこで幽閉されて戻れなくなってしまった。宗右衛門は自ら命を絶ち、魂となって、約束の日に左門と再会を果たす。約束を守るためには死も辞さない、人間の気迫に感銘を受けました。