絶滅危惧種が100万種以上! 名前もつかずに消えゆく種がいる

政府間組織が明らかにした悲惨な現状
山田 俊弘 プロフィール

もう1つの理由は、昆虫の絶滅危惧種の割合です。IPBESは昆虫の絶滅危惧種の割合として「10パーセント」という数字を用いたと紹介しましたね。しかしIPBESの報告書が公開された直後から、「この割合はもっと高いはずだ。15パーセントは下らない」という意見が寄せられています。

仮に昆虫の絶滅危惧種の割合が10パーセントではなく15パーセントならば、絶滅危惧種数の見積もりは119万種ではなく、147万種となります。なにしろ昆虫は大きなグループなので、その絶滅危惧種の割合の変化は、絶滅危惧種の数の見積もりに大きな影響をおよぼすのです。

未曽有の大量絶滅

100万種以上の動植物が絶滅の危機に瀕していることを知り、驚いたことと思います。では、この状況はどれくらい異常なのでしょうか? 

少し唐突ですが、恐竜の絶滅の話をしましょう。かつて地球上には恐竜が繁栄していましたが、約6500万年前の短期間(と言っても数百万年という時間ですが)に絶滅してしまいました。そのことは、ほとんどの読者がご存じでしょう。

6500万年前に絶滅したのは恐竜だけではありませんでした。その他の多くの動植物も同じ時期に姿を消したのです。この出来事は、生命の歴史上、数回起きたことが知られている大量絶滅(短期間に大量の種が絶滅すること)の一つに数えられています。そしてこの大量絶滅は、メキシコのユカタン半島沖への巨大隕石の落下が契機となったと考えられています。

さて、現在起きている絶滅の話に戻りましょう。生物学者は、現在の絶滅の規模は、6500万年前の大量絶滅期と比べても数千倍から数万倍、もしかするとそれ以上に大きいだろうと考えています。   

まさに、未曽有の大量絶滅が進行しているのです。現代を「生命史上六番目の大量絶滅期」とよぶ人も少なくありません。

IPBESは、100万種以上の動植物が絶滅に瀕している異常な現状を露わにしました。しかし、100万以上の種が「絶滅した」とは言っていません。もちろん、人間活動の影響によりいくつかの種がすでに絶滅してしまったことは事実です。

とはいえ、今のところ実際に絶滅してしまった種はまだ少数派です。今ならば、100万以上の種をギリギリ救えるはずです。

ほかの種を絶滅させるだけの強力な力を手に入れてしまったヒトは、彼らとどのような関係を築いていくべきなのでしょうか? 生き物の保全は必要なのでしょうか?

これらの問いは、ヒトがすさまじい力を手に入れてしまったからこそ突きつけられた難題です。このぎりぎりのタイミングに、未曽有の大量絶滅時代をどう生きるべきなのか、考えてみませんか?