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どうしても覚醒剤が欲しい…コロナで加速「薬物汚染ニッポン」の現実

薬物依存者をどう受け入れるか

我が国の薬物汚染の実態を、筆者はこれまでアングラ社会で見聞きした情報をもとに、本コラムの中でお伝えしてきた。

今回は、麻薬密輸の実態と、薬物依存症の人たちの立ち直りの最前線で活躍する民間組織をリポートする。

その前に、我が国の薬物汚染に警鐘を鳴らす麻薬取締官、いわゆるマトリの見解を簡単に紹介する。

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マトリが語る我が国の薬物汚染

<覚醒剤については、2016年に過去最高となる約1.5トンに達した押収量が19年も1トン超えを記録、4年連続で押収量が1トンを超える未曽有の事態に直面している。しかも、これだけの覚醒剤が押収されても巷の覚醒剤価格にはほとんど変動が出ない。この実態から、我々が想像する以上の覚醒剤が日本に波状的に密輸されていると推測することができる。
 薬物依存症とは、薬物が欲しくて堪らない状態、自己コントロールできない生物学的状態のことだ……覚醒剤はこの依存症がとりわけて酷い。止めようと決心して覚醒剤をゴミ箱に投げ捨てても、慌ててゴミ箱をかき分けて拾い上げてしまう。どうしても覚醒剤が欲しい……喩えるなら、薬物は強烈な毒性を持つ魔性のウイルスだ。新型ウイルスが上陸すると瞬く間に飛散し、多くの乱用者が出る。乱用者が出れば出るほど犯罪組織は儲かる……いま、世界の薬物の取引総額は50兆円規模に膨張したと推測されているのである。
 では、どうすれば薬物犯罪はなくなるのか。残念ながら、ワクチンや特効薬はない。国内外の捜査機関が連携を強化して地道で積極的な取締りを継続するとともに、薬物乱用防止の普及啓発活動をいま以上に強化・拡充し、依存者対策を官民挙げて進めることが急務である>(瀬戸晴美『マトリ――厚労省麻薬取締官』新潮新書 2020年)
 

瀬戸氏が喩えるように、麻薬は社会病理的にみて、強烈な毒性を持つ魔性のウイルスであり、国家的な脅威である。日本社会は、このウイルスと長年闘ってきたが、未だに収束をみていない。実際、新型コロナウイルスよりも厄介であるといえる。

では、一体、どのようにして薬物は我が国に持ち込まれているのか。以下では、過去に海外から薬物を密輸入していたプロの手口を紹介する。