普段から避けられない「命の選択」

病院によって新型コロナの対処療法は異なるというが、折口さんが勤めていた病院では、自宅待機となる軽度の患者にはアセトアミノフェン系の薬が出された。また、中度以上の症状があった入院患者には抗HIV薬が使われたり、コロナの合併症として菌による感染症を起こしそうな場合は、予防として抗生物質が処方されることもあった。

「メディアでは医療崩壊の危機と騒がれたこともありましたが、結果的に救急外来が渋滞してパンクする事態は避けられ、集中治療室に空きがない場合は他院に転院させるなどの対応で十分に乗り切ることができました」

ちなみに、当病院では感染ピーク時のベッド数は集中治療のものも含め200床ほどあり、普段20床だった集中治療室も別の科のものを利用するなどし、50床近くまで増やされたという。

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パンデミックで医療崩壊の危機が迫っていた欧米諸国では、難しい「命の選択」を迫られるといった話がニュースになっていた。

「これは新型コロナに限った話ではなくて、現在は高齢化社会なので、医療現場では以前から毎日のように直面せざるを得ない問題でもあるのです。

例えば、高齢の患者や既往歴のある患者の中で、集中治療室に入ることで何週間もベッドをブロックすることになり、助かる見込みがほとんどない場合は、現場のチームで話し合って判断を下さざるを得ないという厳しい現実があります。新型コロナ対応時期は特に、集中治療室を預かる専門医(微量の調整を要される難しい人工呼吸器の扱いの研修を受けている)が酸素量が少し増える度、現場のあちこちから助けを呼ばれる回数が激増し、手が回らなくなってしまうことがありました。以降、ある一定の酸素量に達した場合に専門医を呼ぶなどルール化される事態となったり、80代以上で既往歴がある場合は集中治療室に入れない判断を下される、といったこともありました」無念の表情を浮かべながら折口さんは語る。

世界の多くの国でICU不足、人工呼吸器不足、防護服や物資不足が叫ばれていた。NYでは病床数が足りずに船上病院も作られた Photo by Getty Images