6月2日、フランスではロックダウン解除の第2フェーズに突入し、カフェやスポーツジムが再開した。海岸、森、公園などが既に解放され、通りを行く人のほとんどがマスクをせずに生活をしている(但し、交通機関利用はマスク装着の義務あり)。5月中旬以降、新規感染者はまだいるものの、死亡者数は依然として2桁台まで減少したままで、ひと頃の騒ぎは収まったかのような印象を受ける。

今回は、新型コロナのパンデミックの中、フランス・パリ郊外の総合病院の救急外来で新型コロナ患者を何人も受け入れた日本人研修医の折口達志さん(25)に、フランスのロックダウンも解除されたあとの6月6日にお話を伺った。

7歳で渡仏した折口さんは現在研修医1年目だ。2019年11月から5月末までヴェルサイユ・アンドレ・ミニョ総合病院の救急外来で研修医として勤務。現在は研修の場が家庭医へと変わり、一対一での患者診察も担う。フランスでの新型コロナ感染拡大時には、医療現場から各日本メディアの取材に応じ、フランスの状況を語ってくれたことも記憶に新しい。研修医として間もなく新型コロナ現場を経験することになった折口さんが見た、パンデミック下の医療現場、そして第一波が去った今の状況と、これから必要なことについて語って頂いた。

パリのロックダウンでまさにコロナ治療の最前線にいた折口達志さん 写真提供/折口達志
※ 家庭医:「メドゥサン・ジェネラリスト」と呼ばれ、各家庭の正式な主治医として、症状に応じた処方箋や総合病院への紹介状を出す、いちばん身近に地域の医療に関わる役割を果たす

新規患者を受け入れ、安心させる役割も

フランスでは2月末頃から徐々にコロナ患者が増え始め、3月にピークに達した。それはちょうど折口さんが研修を開始してから4ヵ月目のことだった。感染者が増加するにつれ、折口さんの勤務する救急外来では、主に感染患者を受け入れる役割を果たすことになった。通常であれば、泥酔した怪我人なども含め、1日の患者数は150〜200名近くにまでのぼるが、パンデミック時は脳梗塞や心筋梗塞など重症患者を受け入れるほかは、ほとんどがコロナ感染患者の受け入れへと集中。患者数自体はぐんと減り、1日100名程度になったという。これには、感染への懸念から病院に来る患者が減ったことが関係している。

実際、折口さんの役割はどんなものだったのだろうか。

「病棟で同じ患者さんを診察し続けるのではなく、毎日訪れる新規の患者さんを受け入れ、症状に合わせて振り分け処置を決める、いわばフィルター的なものだったといえます。テレビで言われているような『患者で溢れ返る』といった現場のイメージとは異なり、救急外来は比較的落ち着いていました。ただ、消毒や防護服の扱いで、結局は同じくらいの時間をとられることになっていました」

コロナの症状で訪れる患者さんを一番最初に診察するということは、安心させるための役割を担うということだ。時には規定外のことでも臨機応変に対応する必要があった。

医師の存在は、患者を安心させてくれる(写真はイメージです。コロナの診察時の服装ではありません)Photo by iStock

「旦那さんが集中治療を受けており、自身も軽めの症状が出ていた患者がいました。その女性自身は身体所見や病歴を見るかぎり軽症で、検査なしで帰宅していただいて問題はなかったのですが、身近な人が重症化していることで感じるより大きな恐怖心や不安、そういった背景を考慮して、血液検査を実施し異常がないことを確認した上で安心させたりしたこともありました」

当時フランスでは、同居をしていた夫を亡くしたにも関わらず、自身は検査もしてもらえず不安を抱え、病院の対応に納得がいかないという話もニュースで紹介されていた。新型コロナに感染した家族への精神的な負担は計り知れないものがあり、医師によるこういったフォローはやはり大切だと言える。