NHK『これでわかった!世界のいま』公式サイトより引用

炎上したNHK「抗議デモ特集番組」、何が問題だったのか徹底解説する

「歴史」と「構造」を知る必要性

6月7日に放送されたNHKの番組『これでわかった!世界のいま』(以下、『世界のいま』)のうち、「拡大する抗議デモ アメリカでいま何が」と題された26分間ほどの特集の内容と関連投稿に国内外から大きな批判が寄せられ、NHKは放送2日後に「お詫び」を発表して、見逃し配信を停止し動画を削除、14日の放送の冒頭では約4分間にわたって謝罪を述べる、という騒ぎがあった。いったい何が問題だったのか。

 

『世界のいま』が描く抗議運動

世界各地から大きな非難を浴びたのはまず、番組内で使われた後にSNSで配信された、1分20秒のアニメーション動画だ。放送された番組の視聴者よりもTwitterでこの動画を見た人のほうががはるかに多いと思われるので、そこに批判が集まるのも当然だ。しかし、問題の核心は動画だけではなく、特集全体の報道と解説のありかたにある。

この特集は、出所不明の爆発音のなか人々が走り回る実写映像で始まり、「激しい暴動」という言葉で状況が紹介される。そして、アメリカで実際に起きている放火や略奪の映像を流した後で、スタジオには「暴徒化」というマークがあちこちに貼られた米国の地図を中心に置き、今回の抗議運動の発端となった事件に触れるが、被害者である「黒人男性」ジョージ・フロイド氏の名前には言及がない。

ジョージ・フロイド氏が暴行を受けている様子。動画が公開された

その後、在ニューヨークの記者が、「一時は街を歩いていると襲われるのではないかという危機感もあった」と述べた上で、破壊略奪防止のためガラス窓に板を囲った店舗の様子(実写映像)を映し、抗議デモがさらに拡がる可能性を心配するような口調で、抗議運動と暴力行為を結びつける。

スタジオの解説者は、警察による黒人への暴力についての背景には、「(白人)警官の漠然とした黒人への恐怖」がある、と説明する。そして、「取材したロスアンゼルスの警察官は、黒人やヒスパニックの居住区で治安の悪い地域に行くときには、かなりの緊張感を強いられる、と言っていた」と述べる。

しかし、そのような恐怖がどのようにして生まれ、再生産し続けられるのか、また、なぜアメリカの都市の多くで特定の地域に黒人やヒスパニックが集中し、そうした地域の治安が悪いのか、という説明はない。さらに、番組後半では、反ファシスト運動「アンティファ」による破壊行為の映像を流して、抗議運動が暴力的なものという印象をさらに強めている。