拉致問題から逃げ「安倍政権はいつ終わるのか?」と尋ねる北朝鮮の思惑

横田滋さんと日朝交渉の18年
牧野 愛博 プロフィール

決定的になった北朝鮮の「不信感」

第二に、拉致問題を巡る北朝鮮との対話は秘密裏に静かに行う方が、効果が見込めるかもしれない。

米国務省で北朝鮮人権問題を担当する特使を務めたロバート・キング氏は今月11日付の米放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューで、北朝鮮に抑留され亡くなった米学生オットー・ワームビア氏の解放交渉を例に挙げながら、北朝鮮との交渉は公開で行わない方が良いとの考えを示した。公開すれば、北朝鮮は在韓米軍の撤収や高額な補償金など、莫大な対価を要求してくる可能性が高いという。

実際、北朝鮮外交官だった高英煥(コ・ヨンファン)元韓国国家安保戦略研究院副院長は「北朝鮮内では日朝国交正常化に伴い、200億ドル(約2兆1500億円)相当の経済支援を期待する声が出ている」と説明する。さらに別の元朝鮮労働党幹部は「拉致問題の解決を先行させるなら、北朝鮮は最低でも1割にあたる20億ドル規模の経済支援を求めてくるだろう」と語る。

自民党は2017年総選挙を「国難選挙」と位置づけ、選挙ポスターに安倍首相の顔写真と「この国を守り抜く」というスローガンを並べて、北朝鮮への圧力強化を訴えた。在京の外交筋の1人は「あれで、北朝鮮の安倍首相に対する不信感は決定的になった」と話す。

Photo by gettyimages
 

そして第三に、拉致問題の進展は今後もありうるが、全面的な解決まで強い忍耐心を持つ必要があるということだ。

北朝鮮は2002年9月の日朝首脳会談で、日本側としてはとても満足がいかない結論であったとしても、拉致問題の存在を認めて謝罪した。2018年6月の米朝首脳会談の前には、抑留していた韓国系米国人3人を解放した。いずれも、日朝国交正常化に伴う経済協力の獲得や、米朝関係の正常化に伴う制裁緩和や緊張緩和など、北朝鮮にとってのメリットを感じたからだろう。

事実、米朝首脳会談前には、北朝鮮当局者の間で、日朝首脳会談の開催を予測する声も出ていた。米朝関係が正常化すれば、制裁が緩和され、日本による経済協力を得る道が開けると計算したからだという。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/