拉致問題から逃げ「安倍政権はいつ終わるのか?」と尋ねる北朝鮮の思惑

横田滋さんと日朝交渉の18年
牧野 愛博 プロフィール

COIは2014年の最終報告書で、北朝鮮当局者の責任を追及するため、国際刑事裁判所(ICC)への付託や国連の特別法廷の設置を勧告した。これを受けて北朝鮮は金正恩氏への追及を恐れ、様々な場所で激しい抗議活動を行うなど、勧告に強い反発を見せた。また、こうした人権運動によって、中国が自国に流れ込んだ脱北者を北朝鮮に送還することが難しくなったり、北朝鮮内で政治犯強制収容所が一部縮小したりするなど、一定の効果が上がっている。

 

「追及か対話か」のジレンマ

ただ、日本政府は昨年3月、突然、国連人権理事会への共同提案者から降りると発表した。

複数の日本政府関係者によれば、提案見送りを主導したのは安倍首相の意向を受けた首相官邸だった。首相は昨年1月半ば、2回目の米朝首脳会談が2月末に開催されることが決まったのを受け、日朝首脳会談への意欲を改めて示し、環境整備を急ぐよう周囲に指示。政府は米朝会談直前に、提案見送りを決めた。

この6月19日ごろに採択される見通しの今年の人権理事会では、日本は形式上、決議案への賛同を示す共同提案国にはなったが、実際に決議案の共同提出作業には加わらなかった。安倍政権にしてみれば、日朝協議は拉致問題の解決に必要不可欠という判断があったのだろう。しかし、これが結果的に人権問題を巡る自らの声望を落とすことになった。

対話を追求するのは悪いことではない。国際社会でも、「人権問題の政治利用はやめるべきだ」という建前のなか、自国の利益のために人権で問題を抱えている中国や中東諸国に接近する国もある。

ただ、北朝鮮が人権問題の追及に緊張しているのは事実だし、国際社会との連携も見込める。その意味で、拉致問題と同時に、北朝鮮に帰国した在日朝鮮人・日本人配偶者、北朝鮮市民の人権問題にも熱心に取り組む必要がある。取り組めば、国際社会も日本人拉致問題に共感し、協力してくれる。

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