アメリカ版「マイナンバー制度」の明と暗…国に収入を把握される怖さ

日本国民よ、同じ轍を踏むな
笹野 大輔 プロフィール

通称「プロジェクト」

ニューヨークのマンハッタンには、もはやスラム街はないが、低所得者用アパート(日本でいうマンション)に貧困層が押し込められた形になっている。通称「プロジェクト」と呼ばれている低所得者用のアパートは、収入の審査があり、低所得でないと住むことができない(約56万人が住み、世帯数は約17万世帯)。

また、家賃についても収入の30%だけ支払えばいいことになっているので、平均で4万円程度と安いが、嘘の申請があればSSNで調べられるだろう。建物の外観は簡素なレンガ造りなので、ニューヨークの風景に溶け込んでいるが、長年住む人からすると「プロジェクト」は一目でわかるようになっている。

NY市内各所にある低所得者用アパートの通称プロジェクト

2015年の調査によると黒人45.2%、南米系44.7%、白人4.8%、アジア人4.7%が、いわゆるプロジェクトに住んでいる人種別であり、黒人と南米系が約9割を占めていることがわかる。この比率は1980年から黒人は変わらず、南米系が増加傾向にあり、白人は減少傾向にある(1980年、黒人51.1%、南米系31.9%、白人14.9%)。ちなみに1980年のアジア人の割合は計測不可。ほとんどいなかったのだろう。現在においてもプロジェクトに住んでいるアジア人は中国系とその他になる※1

行政からの優遇措置があると貧困層は移動する。生活が苦しいからだ。そうすると環境により貧困が連鎖のようにつながり、教育格差も出て貧困は次の世代への負のループになっていく。日本では非正規雇用者の世帯主が4割ともされている(厚生労働省2018年における「雇用者の正規・非正規比率」)。日本はマイナンバーと銀行口座の紐付けが始まるので、税の徴収の厳格化と同時に貧困層の区別化も入口にさしかかったとも言えるだろう。

 

ニューヨークの場合、低所得者層を1ヶ所に集めたことへの教訓から、1984年以降、ニューヨーク市は新規アパートを建設する際には8対2の割合で2割を低・中所得者用にするプログラムを作った。この条件を満たす民間業者は、ニューヨーク市の住宅公社から低金利融資を受けられ、税の控除もある。つまり、低所得者を1ヶ所に集めない施策により、貧困が集中することへの緩和を狙ったのだ。ただ、プログラムは新規アパートに限り、そのプログラムの適用を受ける業者でなければいけないので、まだ数は十分とはいえない。

※1 ソース:NYCHA 2019 FACT SHEET