ドイツでは留年も子どもたちが選べる

自粛ポリスやテラハヘイトを生む片棒を、日本の教育が担いできたのではないか

伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』(小学館)など、子育てに関する書籍が10冊を超える池上正さん(63)も、このことを否定しない。
「みんなができることができなかったり、みんなと違うことをする子が責められますね。勝手なことをするな、ちゃんとやれ、と。よく見ていると、そんなふうに文句を言われる子はサッカーが上手いわけではない。動きが良くなかったり、足が遅かったりする。チームに貢献していないからきつく言われて当然、という感覚が子どもたちの中にあります

これまで50万人もの子どもにサッカーを教えてきた池上さんは、文句を言う子を名指しして叱ったりせず、チーム全体の問題として提起する。
サッカーはみんなで力を合わせてやるものだよね? 自分さえ楽しければそれでいいの?」と。

成績がいい、体育ができるなど、常に順位決めや評価が下される。評価が高い者が上だ、正しい、といった価値観が小さいときから刷り込まれています

サッカーを通じてドイツの教育事情を知る池上さんによると、ドイツではコロナ禍で勉強が進まなかった分は進級してから教えていくという。小中学生でも留年制度があるドイツだが、今回は基本的に全員進級させる。ただ、学ぶ単元が多くなるため、不安な子どもは留年してもいい。

ドイツだけではなく、欧米の多くの学校が留年や飛び級が当たり前となっている。だからこそ「落ちこぼれ」がないのだ Photo by iStock

つまり、進級する、しないを、子ども自身が決められるのだ。教師からもアドバイスはあるだろうが、子どもが選べるというルールがあることが素晴らしい。
「追いつけないかもしれないから、もう1年同じ学年でもいいよ。どうする? 自分で決めていいよ、と子どもに選ばせる。教育の意味のとらえ方が日本と違うわけです」

池上さんはこう訴える。
日本は、もっと子どもの権利をきちんと考えなくてはいけません。子どもは大人が思っているよりもずっと、自分自身のことをよくわかっている。ぼくはこの学年でやりたい、と言えるはず。日本の子どもは権利を行使できない状態だと思う」
日本は子どもに「義務」ばかり伝えてはいないだろうか。